グラフの視覚的な読み取りについて英語で言うと...
Focus on Autism and Developmental Disablitiesの最新号のabstractを流し読みしていたら、次のような書き方を見つける。
According to the visual analyses, students performed better with adapted and interactive video clips.
Evmenova, Graff, Behrmannによる、 Providing Access to Academic Content for High-School Students With Significant Intellectual Disability Through Interactive Videos. という論文。
単一事例実験のデータは伝統的に統計的な方法では分析せず、グラフの読み取りから行なう。
B. F. Skinner以来の伝統で、単一事例実験のデータは統計的方法に頼らず、グラフの読み取りによって解釈されてきており、現在も基本的にそう状況に変わりはない。すなわち、処遇の効果がグラフから一目瞭然であれば特に統計的分析を加えなくてもよいというのが、単一事例実験家の中での基本的な了解事項となっている。
『心理学研究法入門』(東京大学出版)pp.149-150
このグラフの視覚的な読みとりを英語で書くと "According to the visual analyses"になるようだ。
多層プローブデザインについて
単一事例研究の中に多層プローブデザインというものがある。これは、多層ベースラインデザインの一種である。簡単に言えば、一つの層が介入条件にあるときには、介入をしない他の層では測定をしないデザインである。そして、新しい条件が加わえられる時点でプローブと呼ばれる介入条件を含まないテスト試行を全ての層で行い、別の層に介入条件を設定するのである。
これによって、介入がないのにベースラインの測定が続けられる(例えば、できない問題を繰り返し出され続けるなど)という多層ベースラインデザインの欠点がカバーされ、対象者に測定の過度な負担をかけずに済むようである。
以下のビデオは非常に分かりやすく参考になる。
710 06 Multiple Baseline_Multiple Probe Designs
ちなみに、『障害科学の研究法』(明石書店)に載っているグラフ(p.111)だと、介入条件の時に収集されたデータがプロットされていないため、その他の層でデータをとらないということがやや分かりづらい。
ちなみにちなみにprobeとは『探り針』のことで歯医者とかで使われる先のとがったやつのことのようで、google画層検索するとそれらしいのがたくさん出てくる。
南風原ほか編『心理学研究法入門』
- 作者: 南風原朝和,下山晴彦,市川伸一
- 出版社/メーカー: 東京大学出版会
- 発売日: 2001/03
- メディア: 単行本
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大変勉強になる本だった。
調査、実験、実践と心理学研究の方法がそれぞれコンパクトにまとまっている。各章それぞれで扱われるトピックついての記述が分かりやすいのもとても良い点だと思うが、この本の最大の売りはそれぞれの研究法が持つ特色を対比させることによって、各方法論の強みや弱点を理解させる作りになっていることに思う。
『心理統計学の基礎』を読んだときにも感じたのだけれど、南風原先生の書くテキストは各論と総論のつながりを大事にしながら基礎を深めさせる作りになっていて素晴らしい。知っている気になっていた事柄でも新しい発見があり、読むと目から鱗が落ちるような気持ちになることが多い読書だった。
ある独立変数の影響を取り除く話
以前の記事、公立特別支援学校教員の平均勤続年齢と平均給与月額のグラフを描いた。
そこでは、平均勤続年数が長い都道府県ほど、平均月額給与が高いという至極当然の結果であった。
今回はその延長線のような話。
勤続年数の影響を取り除いた上で、給与が高い都道府県を知りたいとする。
回帰分析では、従属変数yを、独立変数xと完全に相関する部分(予測値)とxとは完全に無相関の部分(残差)の2つに分解をしている訳なので、残差を取り出せばある変数の影響を取り除くことができるはずである。
というわけで、前回のデータを加工してみる。
とりあえず回帰モデルから残差のデータを作る。
> 回帰結果 <- lm(平均給与月額 ~ 平均勤続年数) > 残差 <- residuals(回帰結果)
当然、残差と平均勤続年数の相関は0になる。
> cor(残差,平均勤続年数)
その後の作業を見やすくするために、都道府県と残差のデータフレームを作って、order関数で並べ替える。
> 都道府県と残差 <- data.frame(都道府県,残差) > 都道府県と残差[order(都道府県と残差$残差), ]
で出てきたのがこの順番。
都道府県 残差 38 愛 媛 -22.62874924 25 滋 賀 -22.03543718 42 長 崎 -17.71294516 40 福 岡 -16.88999525 20 長 野 -15.91871732 26 京 都 -13.39956927 8 茨 城 -11.30625721 41 佐 賀 -9.30245535 32 島 根 -8.80002716 19 山 梨 -8.57084720 3 岩 手 -6.75124126 47 沖 縄 -6.13255110 43 熊 本 -5.52251918 16 富 山 -5.33497929 12 千 葉 -4.48710917 17 石 川 -4.38330730 10 群 馬 -3.93163532 1 北海道 -3.82251918 46 鹿児島 -2.39045314 35 山 口 -1.86993142 44 大 分 -1.84789729 45 宮 崎 -1.82874924 30 和歌山 -1.69668319 39 高 知 -1.30579932 29 奈 良 0.06790679 22 静 岡 0.22246486 21 岐 阜 0.33872683 24 三 重 0.78128268 18 福 井 0.79085670 6 山 形 0.81334873 11 埼 玉 1.38416876 14 神奈川 1.84541477 28 兵 庫 3.43295467 7 福 島 5.66456282 33 岡 山 6.53918472 36 徳 島 6.73538286 9 栃 木 7.03249677 27 大 阪 7.35453090 31 鳥 取 10.14541477 34 広 島 11.32626672 23 愛 知 14.99997284 2 青 森 15.67748082 4 宮 城 16.56547860 37 香 川 19.39420068 13 東 京 19.91912089 5 秋 田 20.90954686 15 新 潟 25.92961069
平均勤続年数の影響を取り除いた上で、給与が高いのは新潟らしい。
だから、なんだという話ではあるのだが。
佐藤暁『発達障害のある子の困り感に寄り添う支援』
発達障害のある子の困り感に寄り添う支援 (学研のヒューマンケアブックス)
- 作者: 佐藤暁
- 出版社/メーカー: 学習研究社
- 発売日: 2004/08/24
- メディア: 単行本
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同じ著者の『自閉症児の困り感に寄り添う支援』がとっても良かったため、同じ「困り感」シリーズであるこの本を手にとってみた。
『自閉症児の〜』ほどのユニークさはないものの、発達障害のある人の立場にたってその困り感を理解しよういう姿勢は通底している。
例えば、子どものトラブルへの対応について書かれたページでは、ABCの記録を分析することが紹介されているが、そこでは、ABCの分析は行動を制御し変容することを主たる目的としている訳でなく、あくまで困り感を理解するための補助として役割を担っている。そして、困り感を軽減する対応を通じて問題の解決を図ろうとしており、同じABC分析でも純粋なABA的な考えとは大分違った印象を受ける。
また、発達障害児を学級などの集団の中において理解し支援しようとしているのもこの本の特色だと思う。特別支援関係の本は、とかく子ども一人ひとりをどう理解して支援するかという話に終止しがちだ。だが、この本では学級集団を育てる中でどう支援を行なうのかであったり、周りの子どもとその保護者へどう対応するかであったりと、発達障害のある子を個人として独立にとりあげるのでなく、学校生活の現実に即した形で理解し支援をする方法を紹介している。特別支援教育臨床を専門と掲げ、多数の学校を訪ねて支援の在り方を研究してきた著者だからこそ書けるような本なのだろう。
あとがきにはつぎのように書いてある。
「組織的支援」の重要性が強調されている。特別支援教育コーディネーターや校内委員会を設置することはけっこうである。しかしより大切なのは、学校の教育活動全体を組織化することではないだろうか。「組織的支援」には、「個の子どもの支援にかかわる組織化」と「教育活動全般にわたる組織化」の両方が必要である。このことが、この本を送り出す現時点で著者がたどり着いた、とりあえずの結論である。(p.189)
通常級の担任の先生から、特別支援教育コーディネーターや支援学校の先生など、幅広くオススメできる本である。(ただ絶版ぽいのではありますが・・・)
散布図にラベルをつけて遊んでみる
意味はよく分からないけどグラフを描いてみようのコーナー。
せっかくRについて入門したのだから適当なデータを適当にグラフにしてみるだけして遊んでみます。そのグラフが何を意味するのか等はとりあえず置いておいて。
今回使うデータはこれ。
平成25年度実施の「学校教員統計調査」の中にある公立特別支援学校教員の都道府県別本務教員の平均勤務年数・平均週教科等担任授業時数・平均給料月額(表番号60)から必要なデータをひっぱてきます。
http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001058725&cycode=0
エクセルファイルで表がダウンロードできるのでいらないところをちゃちゃちゃっと消してcsvで出力してRに読み込ませます。
都道府県ごとに平均勤続年数と平均給与月額を散布図で描いてみます。このとき、プロットした点にラベルがつけられると楽しいなぁということで、それ用のmaptoolsパッケージを使ってみます。
liblrary(maptools) plot(勤続年数,平均給与月額, xlab="勤続年数(年)",ylab="平均給与月額(千円)") pointLabel(勤続年数,平均給与月額, labels=都道府県)
pointLabelというのがmaptoolsに入っている関数。
で、出てきたのがこの図。
文字がやや大きいかな...
ということで文字サイズを変えて、ついでだから回帰直線も加えてリトライ。
plot(勤続年数,平均給与月額, xlab="平均勤続年数(年)",ylab="平均給与月額(千円)") pointLabel(勤続年数,平均給与月額, labels=都道府県,cex=0.8) abline(lm(平均給与月額 ~ 勤続年数))
まぁこんなところでしょう。
見て分かる通り、平均勤続年数が長い県ほど、教員の平均給与が高いです。年齢が上がれば年功序列で給与が上がっていくんだから当たり前ですね。ちなみに分散説明率0.65でした。
以下のサイトを参考にさせていただきました。
Rでラベル付き散布図を作成して保存するまで - 503 Service Unavailable
RTIの解説論文
RTI(Response to Intervention)というと、私は海津先生のMIMしか知らなかったのだが、そもそもこれがどういう経緯で出てきたのかが知りたくて読んだ。
RTIが読みの早期指導に焦点を当てている背景に、アメリカでブッシュ政権のときに成立したNo Child Left BehindやらReading Firstなどの政策の影響を受けている事情などが書かれている。
ただ、10年以上前の論文なので今がどうなっているかは知らない。