猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

調べたこと・考えたこと

世論調査と誤差

NHKの世論調査で各党の支持率が公表されていた。www3.nhk.or.jpNHKのサイトによれば、NHKの世論調査の標本サイズは3600人だそうである。世論調査の手順 - 調査相手の抽出 | NHK放送文化研究所3600人の抽出調査に対して誤差の範囲が次のように紹介されている…

日本版WISC-Vは今

ブログへのアクセスを見ると、WISC-Vの動向が気になる人が多いようで、英語で書かれた資料をまとめた次のページへのアクセスが多い。nekomosyakushimo.hatenablog.com 日本語版の開発状況がどうなっているのかというと日本文化科学社のサイトに次のようなペ…

LD学会所感

10月7日から9日の間に宇都宮で開催されたLD学会に参加してきた。きれいなまとめや読者に有益なまとめなどは目指さず(というか私には出来ませんし)、拡散した思考を書き散らかしておく。親の会のシンポ、ローラクリンガー先生による特別公演、内山先生によ…

必要なサンプルサイズの大きさは(実験編)

前回の記事で、調査を行い母集団における比率を求める際に、誤差を任意の範囲内に収めるための計算について書いた。比率については、 の式の、Eの部分に収めたい範囲の誤差を代入すると求まることが分かった。式の上では理論的に求まったものの本当にこれで…

必要なサンプルサイズの大きさは

先日社会調査に関連した話の中で、「完全に無作為抽出が達成されてたとしたらサンプルサイズがどれくらい必要か」についての話になった。「今の首相を支持するかどうか」のようなシンプルな比率の調査をする際にどれくらいのサンプルの大きさがあれば信頼に…

二項分布の4次のモーメントの導出

前回までで3次のモーメントをやったんだから次は4次だろう(安易)。nekomosyakushimo.hatenablog.com nekomosyakushimo.hatenablog.com 原点まわりのモーメントの導出 まず、モーメント母関数を3回微分したのものがこちら。 これを、(大変に面倒くさいけど…

続・二項分布の3次のモーメント

前回の記事で、モーメント母関数を用いた二項分布の3次のモーメントの導出について書いた。今回は、二項分布から抽出したデータの分布を実際に見ながら3次のモーメントと分布の形にについてみてみる。Rのデフォルトの関数には、歪度を計算するものはないらし…

二項分布の3次のモーメント

統計学の教科書において確率分布を紹介するときに2次のモーメントまでしか載っていないことが多い。モーメント母関数を用いれば、何次のモーメントでも求めることができるので、何の役に立つかは分からないが、ここでは二項分布の3次のモーメントを求めてみ…

モーメントについて

モーメントについての学習メモ。モーメント(積率)という概念がある。これは、確率分布の性質のうちのいくつかを数値で表したものである。平均値や分散というのもモーメントの一種である。離散値をとる確率変数について、その確率分布をとしたときに、の期…

続続・自由度について(実験修正編)

以前書いた記事で不偏分散と標本の分散の比較し、そのときは別々の標本からそれぞれの統計量を計算した。nekomosyakushimo.hatenablog.comしかし、よくよく考えると同じ標本からそれぞれの統計量を計算した方が比較の観点からは正しかったのだと気づいた(標…

続・自由度について(別証明編)

前の記事までで、標本のデータから母分散を推定するには、n-1で計算した不偏分散を用いると不偏推定量が得られることについて書いてきた。nekomosyakushimo.hatenablog.com nekomosyakushimo.hatenablog.com今回はそのことについての別の観点からの学習メモ…

続・自由度について(実験編)

この記事は不正確な内容を含みます。下記の新しい方の記事が正確です。(2017/9/18) nekomosyakushimo.hatenablog.com ーーーーー前の記事で、標本から母分散を推定するときに、nではなく自由度であるn-1を用いることについて書いた。今回はそのことをRを用…

自由度について

統計関係の概念の中でも理解しづらいものの一つに「自由度」がある。得られたデータから、母分散の不偏推定量を求める時に、nではなくて、n -1 で割るだとか説明されて分かったような分かっていないような気になるアレである。それに関連する学習のメモ。ま…

連続のための修正とは何か

連続のための修正(連続性の補正)について調べたことのメモ。(まだ理解は不完全なのであまり信用できる記事ではありません。) やや遠回りではあるが、まずは離散変量での検定について考える。コインを10回投げて表の出る回数(確率変数)というのは、n=10…

信号検出理論事始め

信号検出理論というものがある。もともとは、レーダーの性能など通信工学的な分野で発展した理論でそれが感覚や知覚の心理学研究に応用されるようになったらしい。以下の本を参考に、自分の学習のメモを残す。(記事の内容の正しさは保証できないため、しっ…

2E教育について

自宅に『LD研究』が届いたので、パラパラと目を通す。特集は昨年のシンポジウムの2E教育について。基調講演の後に話題提供が4件続き、その後に指定討論者のコメントが加えられるというスタイルである。話題提供に目を通していて、2Eという概念が未整理な印象…

理論的な根拠と言うけれども

自閉症の人に対する構造化という支援の手法がある。わたしのブログのタイトルにもなっている。先日友人と話す中で、それに関連して次のような質問を受けた。「自閉症の人の認知の仕組み(例えば、実行機能障害や弱い中枢性統合など)を明らかにすることは、…

比率の差の検定・多重比較

群間で条件ごとに比率の差を検討したいような状況を考える。例えば、自閉症の人の弱い中枢性統合の仮説を検討するためにHappeという研究者が1996年に行った実験の分析はその状況である。研究では、通常錯視が起きやすいと思われる2D条件と、錯視が起きずらい…

自閉症系の国際誌のインパクトファクター

【2017年8月30日に追記】Mollcular Autismって雑誌があってこれはIF4.833らしい。編集主任の一人は「心の理論」でお馴染みのSimon Baron-Cohen 。2010年からの雑誌で、基本的にオープンアクセスっぽい。Molecular Autism | Home page【追記ここまで】 どれが…

配置処理の3種類

顔の認知の際には、顔の各パーツ(目とか鼻とか)のレイアウトに関する処理を行っている。こうした要素間の関係についての処理のことを、配置処理(configural processing)という。Maurerらのレビューによるとこの配置処理には3つのタイプがあるのだそうだ…

二項分布とポアソン分布

二項分布とポアソン分布も親戚関係にあるらしい(『キーポイント確率統計』岩波書店)。二項分布を、npをλに固定したまま、pを0に近づけ、nを無限に大きくしていくとポアソン分布が現れるからである。二項分布は超幾何分布の子どもだった訳だから、さしずめ…

大数の法則のシミュレーション

『統計学入門』(東京大学出版会)の中で大数の法則を説明している章があり、その中でコンピュータシミュレーションによる実験が紹介されている。成功確率p=0.4のベルヌーイ試行を20000回行い,100回おきに成功率を計算して、nが増えるに従いp=0.4に近づくか…

測定することと情報の取捨選択

ある測定方法をとることは、何かをあきらかにし、何かを捨てている。「その測定により何があきらかにされたか」,「その測定により何が捨てられたか」を考えることは, 他者の研究をみる上でも, 自分の研究を行う上でも重要である。(市川, 1990, p.8) さすが…

超幾何分布と二項分布

超幾何分布というのは二項分布の「親」であるらしい(『キーポイント確率統計』岩波書店)。どういうことかというと、超幾何分布の当たり数とはずれ数の比を一定にしたまま、当たり数とはずれ数の数を極限まで増やすと、二項分布に一致するからである。これ…

超幾何分布について

超幾何分布という確率分布がある。これは、二項分布の非復元抽出版のことである。トランプを山から何枚か引く場面を思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれないが、1枚引くたびにカードを元の山に戻すのが復元抽出で、カードを戻さないのが非復元抽出であ…

多変量正規分布の累積密度とか

以前の記事で多変量の正規分布に従う乱数を発生させるのにMASSというパッケージを紹介した。 任意の母相関を持つ多変量の生成 - 猫も杓子も構造化多変量の正規分布を扱えるパッケージは他にもあって、mvtnormというパッケージがある。こっちのパッケージのrm…

任意の母相関を持つ多変量の生成

例えば、母相関係数が0.9である変数xと変数yを生成したいとする。google先生で調べると次のようなサイトが次のような資料を見つける。Rで架空データの発生なので、言われた通りにやってみる。 rho <- 0.9 n=1000 z <- rnorm(n,0,1) e1 <- rnorm(n,0,1) e2 <-…

行動カスプとは何か

応用行動分析学(ABA)のマイナー用語を調べてみようのコーナー。今回取り上げるのは行動カスプ(behavioral cusp)。カスプとは先端とかとがった部分という意味です。この概念の提唱者はRosales-RuizとBaerという研究者で、1996年だとか1997年だとかがおそ…

ABAと用語の誤用

以前の記事でも似たようなことを書いたが、最近ABA関連でまた誤用に出会った。ABAにおける「ABABデザイン」という言葉が、「ベースラインに後続して介入条件Aと介入条件Bを繰り返す実験デザイン」だと勘違いされていた。ABAの適当な教科書を参照すればすぐに…

正の強化・負の強化という言い方をやめにしよう

表題の通りの主張です。代わりに「好子出現の強化」「嫌子消失の強化」を使うと良いと思う。なぜこんなことを思ったのかと言うと、先日「行動分析の専門家」を自称する人が負の強化を誤った用法で解説しているのを聞いたからである。その人はストーカーを例…