猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

太田ほか編『StageⅣの心の世界を追って 認知発達治療とその実践マニュアル』

StageIVの心の世界を追って-認知発達治療とその実践マニュアル(自閉症治療の到達点3)

StageIVの心の世界を追って-認知発達治療とその実践マニュアル(自閉症治療の到達点3)

太田ステージ評価と認知発達治療についての本。前二作(『自閉症治療の到達点』『認知発達治療の実践マニュアル』)では太田ステージ評価の理論的な基盤と、太田ステージ評価でStage Ⅰ〜Ⅲ-2に該当する人への治療教育の実践例が紹介されていたが、本書はStage Ⅳに該当する人への実践例が収められている。

前半部分は、Stage Ⅳを中心として、その認知特性や事例、ライフステージ別の発達の変化、Stage設定の妥当性の検討などが簡潔にまとめられている。後半では、Stage Ⅳの認知発達治療の実践として42の発達課題が収められている。

本を読んで感じたこととはずれるが太田ステージについて学んできて良いと思った点について以下に書く。

実施が簡便

アセスメントを実施するにあたって、時間的・金銭的なコストというのはとても大事に思う。どんなに対象者のことが正確に分かる(つまり信頼性や妥当性が高い)アセスメントだろうが実施するの膨大な手間暇がかかるようでは実践の場で使えないからだ。太田ステージは実施時間が短く、必要な用具も少なく、検査者のトレーニングも少なくて済む、非常に使いやすい(つまり実用性が高い)アセスメントに思う。

得られる情報が多い

上に書いたように実施が簡便なのだが、その割に得られる情報が多いと思う。シンボル機能の発達について知ることで、言葉についてだけでなく、行動面の基礎となる認知構造(例えば、何を手がかりとして行動が起きているのかなど)についても分かり、対象者の学習面・行動面双方への支援の方策を立てるのにとても役に立つ。

指導内容がパッケージングされている

アセスメントを行なうと行なうべき指導内容まで分かるという点もとても便利だと思う。例えば、「対象者がStage Ⅱだ」と分かると「Stage Ⅱの段階に適当な課題はこれとこれとこれです」と必要な課題がまとまっており、しかもそれらの課題も作成にそんなに手間がかからない。これがWISCとかのようなアセスメントだと「これこれこういう認知特性です」と分かるところまでは情報をくれるが、その先の認知特性を考慮して指導の目標・内容を決めるところについての情報はアセスメント自体には含まれていない。太田ステージは至れり尽くせりに思う。