猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

「次へ。次へ。」と進む前に

"TEACCH Structured Teaching Assessment: Guides to Individualizing the Schedule and the Work System"という本がある。ノースカロライナ大学のTEACCH部が出しているもので20ページにもみたない薄い本なのだが、TEACCH部で研修を受けた人が自分の実践の場に戻った際に、アセスメントに基づき構造化された指導を行い、その構造化された指導について「再評価」をし、「再構造化」をするための手引書として書かれている。

Assessment Tools — TEACCH


一応日本語訳もなされているようで『TEACCH 再構造化の手引き』という書名で以下から買える。(一般流通はおそらくしていない。)

ブックストア フロム・ア・ヴィレッジ

さて、この本の最初のページには次のようなことが書かれている。

The measure of success is for each student to independently use an individualized schedule and work system, not necessarily that the student use the most sophisticated (or "highest") level.

また、スケジュールの再構造化のページには、再構造化されたスケジュールを使い自立的にスケジュールを使えるようになった次の段階として、より洗練されたレベルのスケジュールを使おうと考えている支援者に対して以下の様な警句が書かれている。

Remember that the goal is to design a schedule which will help your student function most independently. Do not use a more sophisticated (or " higher") type of schedule unless your student is able to use it independently. (p.4)

これらの記述を読むと、「環境を調整することで自閉症の人の自立を目指す」TEACCHの姿勢を再確認できる。

支援者(特に学校の先生など)は、一つのレベルを達成できるとどうしても、次のレベルその次のレベルを目指そうとする節がある(と思う)。アセスメントを行い「今ここのレベルだから次はこれだろう」というふうにして目標を設定し、それを達成できたら次の目標を設定し指導・支援する。正しい発達の順序があって、その順序を一歩一歩進めていくことが自立につながると思い指導・支援を行う。

でも、「洗練された(高いレベルの)環境に合わせられる必要ってある? その自閉症の人に合わせた環境で自立していければいいじゃない」というのがTEACCHの主張だ。

自分が「次へ。次へ。」と指導の目標を設定しようとする際には思い出して、「その『次へ』は本当に必要?」と再考するようにしたい。

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