猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

中邑賢龍『AAC入門 コミュニケーションに困難を抱える人とのコミュニケーションの技法』

スペース96 書籍詳細

2000年に出版された『AAC入門〜拡大・代替コミュニケーションとは〜』の改訂版。まえがきによれば、インターネットの普及やスマートフォンタブレットなどテクノロジーの発展により、AAC技法がその在り方を変えている中で、テクノロジーを中心としてAACを考えるのでなく、障害ごとのコミュニケーション技法に焦点をあて、コミュニケーションを基礎からしっかりと考えるために改定したとのこと。

AACとは、American Speech-Language-Hearing Associationの定義によれば「重度の表出障害をもつ人々の形態障害(Impairment)や能力障害を(disability)を保証する臨床活動の領域を指す。AACは多面的アプローチであるべきで、個人のすべてのコミュニケーション能力を活用する。それには、残存する発声、あるいは会話機能、ジェスチャー、サイン、エイドを使ったコミュニケーションが含まれる。」とのことである(p.11)。以前にこのブログで取り上げたPECS(Picture Exchange Communication System)もAACの一種である。

前半部分では、障害者の自己決定とコミュニケーションの関係性、ICFによる障害観、(障害の有無にかかわらない)コミュニケーションが成り立つ前提、などコミュニケーションそのものについて考える章が続く。

後半部分では、言語障害、アスペルガー障害、重度の知的障害、重複障害など障害ごとに、コミュニケーションの困難さ、支援のアプローチ、活用できるAAC技法が紹介されている。続いてコミュニケーションエイドの技術的な側面についての解説があり、最後は今後のAACの在り方について社会の変化の視点から展望が述べられている。

残存する身体機能を拡大するために色々なテクノロジーが開発されていることが紹介されており、自分が明るくない分野であったこともあり、(自分の行なう支援に生きるかどうかはさておき)単純に面白かった。


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