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猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。ブログ名にあまり意味はありません。

E.ショプラー他『自閉症の治療教育プログラム』

読んだ本

自閉症の治療教育プログラム

自閉症の治療教育プログラム

1983年に行われたTEACCHの第1回東京セミナーの講義を翻訳したもの。講義の記録なため、話を聞いているような感じでサクサクと読み進めることができる。翻訳も良い。

ただ出版されたのが今から30年以上前であるので、TEACCHの考え方にこれから入門しようという人は、より新しい適当な入門書を読んだ方が良い。TEACCHプログラムの発展に興味がある人は読んでみると面白いかもしれない。

さて、本書の1章はショプラーによるTEACCHプログラムの背景や基本的な考え方の解説だが、その中で以下の6つが治療教育の原則として述べられている。

  1. 親は子どもを治療する場合の共同治療者であるべき
  2. 精神分析などの心理療法よりも、行動変容と特殊教育を主とするのがよい
  3. それぞれの子どものための個別のプログラムに基づいて行われる
  4. 治療教育プログラムは発達評価に基づいて行われる
  5. 特別な技術的分野のみを専門とするよりも、むしろジェネラリストであるべき
  6. 適応能力を2つの面(自閉症児のスキル獲得と環境調整)から評価し援助しなければならない


近年のTEACCHの入門書を見ると、その原則は7つの原則というように拡張をしている。TEACCHプログラムを紹介している梅永(2001)によると以下の7つが挙げられている。

  1. 自閉症の人の適応力を向上させる
  2. 親を共同治療者とする
  3. 診断と評価に基づいて個別的指導を行なう
  4. 構造化された指導・教育を行なう
  5. 自閉症の人の障害をそのまま受け入れる
  6. 認知理論と行動理論を組み合わせて行なう
  7. 専門家はジェネラリストでなければならない。

さらに、内山(2006)にあるショプラーへのインタビューによれば次の9つが挙げられており、年を経るにつれてその原則が拡大・修正されているのが分かる。

  1. 自閉症の特質を、フロイト流の見方にとらわれることなく、認知的・行動的な視点から理解する
  2. 自閉症の治療にあたって保護者と専門家が協力する
  3. 新しいスキルを教え環境を調整することで、自閉症の人の適応性を高める
  4. 子どものさまざまな状況やゴールに見合った応用を知るため、個別のアセスメント(評価)を行なう
  5. 学習と自立を支援するため、構造化された指導法を活用する
  6. 自閉症を理解するため、認知理論と行動理論を活用する
  7. スキルを伸ばすと同時に弱点を受け入れる
  8. ホーリスティックにとらえた子どもの全体像を、家族との関係のなかで見ていく
  9. 生涯にわたるコミュニティーに基礎をおいたサービス

これらを比較してみると、以下の点については初期の原則からほとんど変更がない。

  • 保護者と協力すること
  • 評価に基づいて個別的に教えること
  • スキルの訓練と環境調整により自閉症の人の適応を高めること
  • 一分野から見るのでなくジェネラルに(ホリスティックに)子どもを捉えること
  • 精神分析ではなく、認知・行動の面から理解すること

近年になっての変更点としては以下が挙げられる。

  • 指導の方針に「構造化」という名前を使い出した
  • 子どもの弱点や苦手さをそのまま受け入れることを加えた
  • 生涯にわたるサービスの必要性を主張するようになった

詳しく調べたわけではないのだが、1点目については蓄積された指導法のノウハウがまとまり、指導の原則として整理するにあたり積極的に使い始めたのだろう。(ショプラーのインタビューによれば構造化のアイディア自体は初期の知覚の研究の時点であったらしい。)

2点目、3点目は、初期にプログラムを受けた子どもたちが成長し、教育や訓練でどうにかなる部分とならない部分明らかになってきたことと関連していると思う。このことが、プログラムを居住や就労などの成人サービスの開発に向かわせることになったのであろう。(ここらへんについては、メジボフ他(2005)でTEACCHの第三期と解説されいる部分に書いてある。)

いずれにせよ、初期の教義のようなものに縛られずに必要なものを取り入れていく姿勢はとても良いと思う。

【参考】

  • メジボフ他(2005)『TEACCHとは何か 自閉症の人へのトータル・アプローチ』エンパワメント出版
  • 内山(2006)『本当のTEACCH 自分が自分であるために』学研
  • 梅永(2001)『自閉症の人のライフサポート TEACCHプログラムに学ぶ』福村出版