読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。ブログ名にあまり意味はありません。

瀧本優子・吉田悦規『わかりやすい発達障がい・知的障がいのSST実践マニュアル』

わかりやすい発達障がい・知的障がいのSST実践マニュアル

わかりやすい発達障がい・知的障がいのSST実践マニュアル

SSTというと特別支援教育だとちょっとブームみたいなところがあって(もう終わった?)、色々な本が出ている。教育の場面だとゲーム形式だったり活動集みたいなものだったりが多いような印象を持っている。

ただ、SSTは元をたどれば、精神科のリハビリテーションの技法である。そこら辺の本筋(?)のSSTってどうなっているのかと興味を持ってこの本を読んだ。教育畑のSSTしか知らなかった自分にとっては大変勉強になる内容だった。

この本では、精神科リハビリテーションとしての基本(?)に則ってSSTを解説している。リバーマンの「基本訓練モデル」というのと、ベラックの「ステップ方式」というのがよく参照されているモデルらしく、この分野だと必読文献のようである。そして、それらを発達障害知的障害がある人に対して、どのように適用すればよいのかが検討されている。

生活技能訓練基礎マニュアル―対人的効果訓練:自己主張と生活技能改善の手引き

生活技能訓練基礎マニュアル―対人的効果訓練:自己主張と生活技能改善の手引き

  • 作者: 宮内勝,ロバート・ポール・リバーマン,ラリー・W.キング,ウィリアム・J.デリシ,マイケル・マカン,安西信雄
  • 出版社/メーカー: 新樹会創造出版
  • 発売日: 2005/10
  • メディア: 単行本
  • この商品を含むブログを見る

わかりやすいSSTステップガイド―統合失調症をもつ人の援助に生かす〈上巻〉基礎・技法編

わかりやすいSSTステップガイド―統合失調症をもつ人の援助に生かす〈上巻〉基礎・技法編


実践マニュアルというだけあって、具体的にSSTをどう実施すれば良いのかというSST導入の仕方がていねいに解説されている。実施する場面や機関ごとに、それぞれの注意点や配慮事項などが挙げられている。

実践部分に関する記述を厚くした半面、理論の説明は本当に基本的なものだけに絞っている印象がある。理論的な根拠の部分であったり、実証研究でどう評価されているのかが気になる記述も結構ある。

以下は、読んでいて印象に残った点や疑問点など。

コミュニケーションの3段階の技能

SSTでは、コミュニケーションの技能を受信処理送信と3つの段階に分けているが、この捉え方はコミュニケーション上の問題を整理するにあたって結構使いやすいと思う。

受信の技能では他者からの情報を受け取り環境を正確に把握すること、処理では得た情報をもとに状況に応じた適切な行動を選択すること、送信では選択した適切な行動を言語的・非言語的手段を用いて表現すること、が求められる。

以前関わったことのあるASDの人を例にこれらの技能を考えてみる。

その人はMacなどのApple社の製品がとても好きで、その話を始めると相手がつまらなそうにしていも、その話を長々と続けてしまう人あった。わたしは比較的Macが好きだったので、その人に見つかると長々とMacの最新情報を聞かされるのであった。

で、この場面で身につけるべきスキルが「相手の態度を見ながら、必要に応じて話題を変える」だとする。その場合、受信、処理、送信の3つの段階から以下のように、スキルを捉えることができる。

受信:話し相手の表情や態度から、相手が話題に興味を示していないことに気づく。
処理:このまま話を続けると相手はつまらないままなので、話題を変えたほうが良いと判断する。
送信:「ところで〜」「そういえば〜」等の表現で話題を変えて会話を維持する。

これらのどこにつまづきがあるかによって、採択するトレーニングの種類が変わるという訳だ。

スキルの内で送信の部分の行動だけに焦点を当てているのであれば単なる行動療法だが、その行動を起こすのはどういった状況か、その行動を起こすと何が起こるか、などといった認知的な判断の過程を重視しているあたりが、SST認知行動療法にカテゴライズされている理由なのだと思う。

評価がエピソード的

本の後半部分で実践事例が紹介されるのだが、SSTの効果を評価する部分が、どの事例もエピソード的な記述に偏っているのは気になった。トレーニングの効果があったかどうかの評価は、実生活でのそのスキルが使用されたか(および、その結果として対象者のQOLが向上したか)だと思うが、スキルが日常生活に般化して起きたかどうかのデータを集めて変化を示した事例はほぼなかった。多くは、本人の満足度や指導者の印象に残ったエピソードを語るものである。

これは、精神科外来の中で行われることが多いという制度的な要因もあるように思うし、そもそもセッションで取り上げたスキルが日常生活に般化しづらい(とよく言われている)こと自体も要因として絡んでいるように思う。

特に、後者のスキルの般化についてはとても関心がある分野なのでまたいつか改めてとりあげたいと思う。