猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

Hodgdon, L. Q. 「視覚的コミュニケーション援助を用いて社会行動上の問題を解決する」

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

書誌情報: Hodgdon, L. Q. (1999). 「視覚的コミュニケーション援助を用いて社会行動上の問題を解決する」Quill, K. A.(編)『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』(安達潤・内田彰夫・笹野京子ほか訳)(377頁-411頁). 松柏社.[原著:Quill,K.A. (Ed.) (1995). Teaching Children with Autism. Albany, NY: Delmar Publishers.]

引き続きQuillの本から。Hodgdonによる11章。

この章は、行動上の問題を取り扱っている。行動上の問題というと、先行条件や結果事象の操作といったABA的な枠組みでアプローチをしたくなるところだが、この章では、行動上の問題をコミュニケーションの理解の側面の問題としてとらえ、視覚的援助を用いてコミュニケーションを成立させることが、いかに行動上の問題を減らすかを論じている。ABA的な枠組みで話をすると先行条件条件の操作に特化している立場とも言えると思う。

10章のDalrympleは、視覚的な支援の環境的側面に焦点を当てていたが、この章は視覚的支援を自閉症者がどのように理解して行動を起こすのか、そのプロセス的面に焦点を当てている。

前半では、特に音声言語的コミュニケーションの理解の困難さの要因についての研究が紹介され、後半では視覚的コミュニケーション援助を用いて行動を改善していく手法やその導入例が挙げられている。

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前章に引き続き、とても興味のある分野なので参考になる点が多々あった。この章に資料としてついている「状況観察質問紙」(p.447)というのも、コミュニケーションの理解の側面について考える上で有益なものに思った。

ちなみに、この章の最初の頁にはこう書いてある。

自閉症の子どもたちのコミュニケーション能力についての議論は、その表現スキルにほとんど集まっています(Paul,1987)。しかし彼らがまわりのコミュニケーション刺激をとり込んだりそれを意味づけたりする能力については、研究も記述もほとんどありません。(p.415)

出版されてから20年が経つが、この分野での研究はどの程度進んだのかまとめているものがあれば読みたいと思った。

ちなみに、著者が作っている(?)視覚的支援についての解説・紹介しているページがあった。http://usevisualstrategies.com
英語だけど、興味がある人は覗いてみると良いでしょう。