プログレス・モニタリングの妥当性の検証について
海津先生の書いた次の論文を読んでいる。
海津 亜希子(2016). 算数につまずく可能性のある児童の早期把握 ― MIM-PM算数版の開発 ― 教育心理学研究,64, 244-255.
算数につまずく可能性のある児童の早期把握「算数版のMIM-PMを作って、その妥当性と独自性を確かめたよ」って論文。PMというのはプログレス・モニタリングの略で、1回だけのアセスメントで子どもの学習状況を把握するのでなく、継続して子どもの学習状況を追跡することで、子どもの伸びや習得の状況を把握するアセスメントである。そこでは、子どもの個人間差だけでなく、子どもの個人内差についての情報も得ることができる。こうしたプログレス・モニタリングはRTIを基にした指導を行なう上で必須な役割を担っている、と指摘されている(p.241)。
さて、このプログレス・モデリングの妥当性の検討のために、どのような議論がなされているかを見ていくと、論文中では以下の4点が妥当性を検証するための証拠として挙げられている(p.244)。
- 時間的経過に伴い得点の上昇を示すのか
- 算数の基礎的な能力をみるものとして適切であるのか
- 年度初めの結果が年度末の結果を予測できるのか
- この研究での知見はより広範な場において通用するのか
そして、それぞれのについて、次のデータを用いて検討している。
- 実施回を独立変数、点数を従属変数として対応ありの分散分析を行なう
- 標準化されている学力検査算数(CRT-II)とMIM-PM算数版の相関分析を行なう
- MIM-PMの年度初めの結果と年度末の結果の相関係数を算出する
- 実施回ごとにクロンバックのαによる内的整合性の検討を行なう
それぞれの結果を細かく見ていくと大変なので書かないが(気が向いたら書くけど)、おおむねどのデータについても有意な結果が得られ、MIM-PM妥当性が明らかになったとされている。
ResearchQuestionが明示的に示されている論文はとても読みやすいのでお手本にするべきだなぁと思いました。