猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

TTAP副読本を読む(続き)

前回の記事の続き。

nekomosyakushimo.hatenablog.com


後半の事例と解説を読んだメモ。

【事例7】
特別支援学校での移行支援への活用。主に対人関係面のソフトスキルを指導している。DACを作業学習内に取り入れている例が紹介されている。文字ベースの手順表や台詞などの支援が多い。現場実習では機能領域別に様子をまとめている。

【事例8】
就労移行支援事業所での活用。一度就職したが離職してしまい、再就職を目指している成人男性を対象とした事例。TTAPを受けること自体をソーシャルストーリーズで情報提供するなど、さすが自閉症支援界隈で有名な「それいゆ」だなぁと思う。ちなみに心理検査を受けることについてのストーリーの文例があれば全国的にそこそこニーズあるんじゃないか。TTAPのマニュアルが想定しているオフィシャルな使い方を丁寧にやっている(やや解説・教科書チック)。ソーシャルストーリーズやコミック会話での支援を行っているが、これらはソフトスキルの獲得を支援する場面でこそ使えるということを再確認する。事例の内容には直接関係ないが、たくさんの文献に参照しているが文献リストがついてないのでつけてほしい。

【事例9】
発達障害者支援センター利用の特別支援学校5年生への活用事例。地域へのトランジッションを目的としていて、セッションでのワークシステムの訓練や買い物に必要な学習から地域での実際の買い物を通じたインフォーマルなアセスメントの活用に段階的に般化のプロセスを設定している。ひとつひとつが丁寧に書いてあり参考になる。

【事例10】
専門学校学生の進路指導への活用事例。職員が実習を行い、その情報をベースに本人の実習へとつなげている。学校担任、支援センター相談員、ジョブコーチが連携をするのに使っている。どのような段取りで、移行のためのミーティングを持っていったかなどが詳しく知りたいと思った。

【事例11】
特別支援学校高等部の生徒を対象に機能的コミュニケーションの指導に活用した事例。フォーマルアセスメントから①特性、②目標とするスキルの例、③有効な支援方法が記載された「就労支援の分析フォーム」を作成し、その中から「報告」のスキルをピックアップして指導している。校内の作業学習でのインフォーマルアセスメントで支援方略を決定して、DACで日々評価するというお手本のような流れ。現場実習では、同じスキルを発揮できるかみるために、CSAWを実施した上で支援を決定してDACで評価という丁寧な実践。

【事例12】
成人の多機能型事業所利用者の一般就労への移行に活用した事例。フォーマルアセスメント→目標スキル設定→通所施設での実習(CSAW・DAC)の活用という流れ。細かく構造化の程度を変更しているがインフォーマルアセスメントはそういった変更への融通が効く店と、それが形として残っていく点が移行において強みを発揮するなぁと思った。

【解説】

125ページには次のように書かれている。

TTAP実践は学校教育の時期に開始されることとされたこと、その時期にTTAPフォーマルアセスメントセクションは実施されるべきで、そして、生涯に1回きりの実施とし、その後はその人の成長やスキルアップに合わせてTTAPインフォーマルアセスメントセクションのプロセスを繰り返して、CRSにため込んでいくことで、何回もフォーマルアセスメントセクションを実施する必要が内容に造り込まれていること、などがあげられます。(下線、太字ともに原文のまま)

これを読む限り、フォーマルセクションの位置づけというのは支援方略の確定的な側面が強くて、そこから大きく発達段階や知的機能などが変わることは想定していないのだろうと思う。それをベースにインフォーマルセクションを基にして蓄積していくスキルが就労移行へ向けた支援・指導の要なのだろうから、フォーマルセクションで終わらせてしまっては、旨味を活かしきれずもったいないのだろう。いずれにせよユニークなアセスメントであることは間違いないと思う。