猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

小倉晶男『福祉を変える経営ー障害者の月給1万円からの脱出ー』

福祉を変える経営~障害者の月給1万円からの脱出

福祉を変える経営~障害者の月給1万円からの脱出

著者の小倉さんは、クロネコヤマトで有名なヤマト運輸の元会長で、会長職を退いた後はヤマト福祉財団というところの理事長をしている人だ。

本の内容を一言で言えば、作業所などに代表される障害者福祉の業界にも経済学・経営学の考え方を持ち込み、障害のある人が自立して生活しているだけの給料を払えるようにするべきだ、とまとめられるだろう。

全部で4章からなり、1章では著者が福祉の仕事に就いた理由や日本の現状の障害者福祉の問題点などが書かれている。続く2章・3章では経済学、経営学のごくごく基本的な内容が書かれており、4章では、そうした経済学・経営学の視点を取り入れて、障害者に一万円よりもずっと多い給料を支払っている作業所の実践が紹介されている。

本の中で紹介されている著者らが仕組みを作ったスワンベーカリーというパン屋が現在どうなっているか調べてみたら、出版の時点よりも着実にフランチャイズ店が増えていた。店が増えているというのはそれだけ障害者の働く場が増えたということだ。

株式会社スワン

障害者の福祉を変えようと思い、実際にここまでの仕組みを作りあげる実行力のようなものは、さすが大企業の元経営者という感じで、勢いがあって読み応えのある本だった。