認知の発達段階とピアジェについて
ピアジェについて調べ物をしている。自分にとってのピアジェは太田ステージによる認知発達治療に理論的基礎を与えている人で、『自閉症療育の宝石箱』や『自閉症治療の到達点』で得た理解がベースであった。
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訳あってちゃんと学ぶ必要ができたので次の論文を読んだのだが大変勉強になった。(全然理解できない部分も多々あったが)
印象に残っている部分のメモを残す。
発達の連続性・不連続性をどう捉えるか
発達を捉える時に、量的な連続性のあるものとして捉えるか、質的な不連続なものとして捉えるかは一つのトピックである。たとえば、ウェクスラー系の知能検査では、簡単な問題から難しい問題まで並んでおり、たくさん正答できるとたくさん点数を獲得できる。30点以上で〇〇段階のような区切りがある訳でなく、認知機能を数量化された連続性のあるものとして捉えている。このような見方は典型的な連続性を強調した捉え方である。
これに対して、ピアジェの発達段階は、発達を質的に異なる4つの段階に区切っている訳だから、一見すると典型的な不連続的に捉える見方に思える。しかし、ピアジェの発達段階は前段階で獲得したものを分化・統合したものであるため、この点から言えば連続性を強調したものである。
したがって、「ピアジェの発達観は発達の速続説でも不連続説でもなく,両者の対立を止揚した弁証法的発達観(p.376)」ということになる。
ピアジェは認知発達は知能一般や認知機能全体のものでない
著者によれば、ピアジェの発達段階は、認知機能全体を対象としたものでなく、「知的操作」に限定したものであるようだ。知的操作とは、対象についての対応変換行為である。対応変換行為とは対象を分けたり、まとめたり、並べたり、対応づけたりといった主体の働きかけであり、これが、将来的には、論理数学的認識として結晶化してくとのことである。
認知機能には、知的操作以外にも記憶や言語能力など様々な能力がある。WISCやK-ABCみたいな検査を想像してもらえば、自明のことだろう。
ピアジェが唱える発達段階は、あくまで知的操作という認知の働きに限定された理論である。そういった点では、認知機能の領域固有の知識と言うことができるが、知的操作は認識活動の一般的な形式であるため、様々な認識活動の基礎にあるという点をみれば、領域普遍的な性質も有している。やはり「ピアジェの発達観は認知発達の領域固有性と領域普遍性の対立を止揚した弁証法的発達観(p.376)」を有している。
未だに咀嚼できていない部分も多々あるので、もう少し全体的にピアジェを学んだらまたこの論文に戻ってきたい。