猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

通常学級の特別支援本

通常学級の特別支援─今日からできる! 40の提案─

通常学級の特別支援─今日からできる! 40の提案─

通常学級の特別支援セカンドステージ―6つの提言と実践のアイデア50

通常学級の特別支援セカンドステージ―6つの提言と実践のアイデア50

最近読んだ実践的な本の紹介でも。通常学級の特別支援に焦点を当てた本。著者の現場での経験がコンパクトにまとまっており、通常学級の特別支援を考える人には参考になる点も多いだろう。

今だったらきっと「ユニバーサルデザイン」って書名のどこかについて売られるだろうなぁ、というような実践でのアイディアや考え方が多い。1冊目の方は2008年が初版なので特別支援教室が始まって1年ぐらいしかたっていない時期だが、古さは感じないし、UD界隈で言われるような考え方の多くが本の中でも紹介されている。

本全体の印象として、当事者や保護者へ敬意というか礼儀というかがあって、そこには大変好感が持てた。たとえば、1冊目の提案1は「子どもの本音の思いを大切に」というタイトルがついていて、当事者の声から始まっている。本では様々な提案がなされるのだが、出発点が「子どもの見え方・聞こえ方・感じ方」というのが、この本全体の持つ性格を象徴しているように思う。

2冊目の方に、家庭との連携の際のプライバシーへの配慮や親の生活への影響についてかかれており、次のような記述がある。

少なくとも次のことは言えるーー子供の家庭・地域生活づくりは親の生活の一部の変更を確実に迫る。子どもの生活づくりは親の生活づくりでもある。このことを心に留めて支援したい。(p.156)

忘れがちなことだけど、大変大切なことに思う。

本の内容には関係ないが、読んでいるうちに著者の研修を昔1度受けたことがあるのを思い出した。小ネタの多い研修で現場の先生方には大ウケだったと記憶している。(私はアクティブな研修があまり好きでないので微妙な気持ちで参加していたのだけれど・・・)

以下は自分のための雑多なメモ。

1冊目

-「 "できる""やれる"支援条件を見つける(p.23)」というアイディア(ワーディング)。

見方を変えれば、この子どもたちは、周りの環境要因を含む支援条件に大変敏感なのだ。私たちの日常を考えても、いつも"できる"こともー聞き慣れない大音量の音楽が流れている部屋ではー集中できず"できない"ことだってある。中略。子ども理解とは、子どもの周りの支援条件を理解することでもある。そして、支援条件に目を向け、改善の努力を図ることが子どもの味方になる第一歩と考えたい。(p.23-24)

  • 学年会を中心とした仕組みづくりで学級を支える話(p.33)
  • 授業は子どもたちの学校生活の中心、特別支援教育の根幹に位置づくべき(p.77)
  • 授業のユニット化の話(p.86)
  • 丸つけをされるのが嬉しくなるキャラクターのアイディア(p.88)

2冊目

  • 「ないと困る支援の専門性:学級経営、授業づくりの専門性(p.iii)」
  • 特別支援教育ユニバーサルデザイン)が「超教科的・超領域的(p.40)」という話は今までの特別支援の発展やSENSのセミナーの内容を見るとよく分かる。もっとも授業UDとかは超教科的な基盤の上に、教科としての専門性を成り立たせようという発想も感じるけど(あくまで外からみた感想)
  • 「〇〇したい。」で終わる分がやたら多い。なんかロマンチック。
  • 「不適応という適応の現実(p.147)」ここらへんの記述は特別支援の実践家であると同時に障害児の親という立場である筆者だからこそリアリティのある書き方ができるのかもしれない。
  • 家庭生活に関連することの聞き取りについてのプライバシーのくだり(p.153) とかこの感覚大事。