心理学における測定について
- 作者: 渡邊芳之
- 出版社/メーカー: 朝倉書店
- 発売日: 2007/09/01
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 2回
- この商品を含むブログを見る
3章「測定をめぐる諸問題」を読んだ。気になったところのメモ。
実験でも理論的も基礎でも臨床でもない領域, それは教育心理学, 発達心理学, 社会心理学といったものであり, 実験心理学よりも具体的な生活文脈に即して対象にアプローチし, 臨床心理学よりも実証を重んじる領域であるといえよう.(p.72)
心理学の各分野の実証を重んじる姿勢の違いについて。
通常, 質問紙調査の場合,「心が狭い」と回答した人に対して, この人は心が広い, とは考えない. 回答者自身の回答を尊重し, この人は心が狭い人だと理解する. このように考える前提には, 回答者は①自身のふだんの行動や心の動きを内省することができ, ②その結果に基づき正直に回答するはずだ, ということがおそらくあるはずである。(p.74)
質問紙調査持つ前提を検討しているが, 改めて言葉にするとすごい前提の上に調査法に思う。
「個性ある機械」としての回答者観, ひいては人間観(p.76)
質問紙調査の前提とする人間観について。
もし, この前提[ある人のある特性には真の値という唯一の値がある(一意に決まる)]を疑うなら, 同一特性・異方法が前提とした「同一」の特性がないかもしれない, ということになる. (中略)そして, 心理的属性・特性が時や状況を通じて基本的に変動しないという前提がないと, (少なくとも古典的テスト理論の)信頼性も妥当性も成立しないのである(p.85)
人には一定程度の多面性, 多様性があり, 誰と接しているときか, あるいは, 何歳頃かによっていくつもの本当の自分がいる, という発想に基づいた測定(論)もありうるのではないかということである.(p.86)
心理学が測定している心理的属性・特性観の問い直し。