猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

竹田契一・里見恵子 編著『インリアル・アプローチ 子どもとの豊かなコミュニケーションを築く』

インリアル・アプローチ―子どもとの豊かなコミュニケーションを築く

インリアル・アプローチ―子どもとの豊かなコミュニケーションを築く

読んだ。

インリアル・アプローチとは、Inter Reactive Learning and Communication (INREAL)の略で、相互の反応的な関わりを通じて、学習とコミュニケーションを促進させていこうというアプローチだ。

その名前にある通り、コミュニケーションの相互作用性を重視している点は、このアプローチの大きな特徴だと思う。子どもとのコミュニケーションがうまくいかないときに、大人はコミュニケーションの「子どもの側の面」のみを切り取り、評価・指導しようとすることが多い。「コミュニケーションが上手くいかないのは、子どもの〇〇がないからだ」といった具合に評価がなされ、そして、子どもの方を指導することで、コミュニケーションの改善を図ろうとする。ここでは、コミュニケーションの不全の原因が一方的に子どもの側に押し付けられている。しかし、インリアルではそうは考えない。本書の中で「コミュニケーションはフィフティフィフティ(p.81)」と説明されるように、コミュニケーションは相互作用であるため、その成否は子どもだけの問題でなく、コミュニケーションの参加者それぞれが負うのである。インリアルでは、ビデオによる分析を行うが、まず最初に分析され評価の対象となるのは子どもと関わる大人の姿勢である、ということがこのアプローチの基本的な考え方をよく表していると思う。

また、言葉だけでなくコミュニケーションそのものに焦点をあてているのも特徴である。言葉をもたない子どもでも表情や指差し、動作などの様々な手段でコミュニケーションをとっており、ビデオでの分析を通じて、そのコミュニケーションの意味や機能を考えたうえで、より豊かな関わりが広がっていくように検討していく。特に、中度・重度の障害を持つ子どもたちとの関わり方について考えるとき大変参考になる視点に思う。