猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

田島明子編著『障害受容からの自由ーあなたのあるがままに』

障害受容からの自由―あなたのあるがままに

障害受容からの自由―あなたのあるがままに

  • 作者: 渡邊芳之,川口有美子,村上靖彦,岩井阿礼,中西英一,堀越喜晴,まさきゆみこ,渡喜代美,田島明子,岡友恵
  • 出版社/メーカー: シービーアール
  • 発売日: 2015/10/30
  • メディア: 単行本
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今まで仕事の都合上、障害受容という概念を使う機会はあったが、しっかりとそのことについて考えたことはなかった。自分自身がいかに無頓着にこの概念を扱ってきたか、大いに反省させられる読書だったと思う。

本書は、寄稿者それぞれの障害受容に関わる立ち位置は違えど、どれも障害受容に関する複雑な心理的なプロセスというか葛藤というかが率直に語られており、「障害受容とはなんなのか」「そもそも障害は受容しなければならないものなのか」という根本的な問いを提示している。自分が直接的に関係しているのは発達障害知的障害界隈なので、二章の「家族の向き合い方、受け入れ方」と五章の「家族の障害受容を考える」という章に特に興味を持って読んだが、それ以外の当事者の受容なども大変考えさせられることが多かった。

特に、「いま実際に障害受容していますか?」の質問に対して、心理学者であり発達障害の子を持つ渡邊の以下の返答はとてもとても考えさせられる内容だった。

私はまだしていないと思います。これは、障害受容をしていることのポイントが何かによると思うのです。行為のレベルで言えば、私たちは障害受容した夫婦です。しかし、子どもが転んで頭を打ったりすると、もしかして障害が治るのではないかと思いますよ、本当に。治ってくれればと。熱が出たりすると、この熱が引いたときに急に人の気持がわかるようになっていないかと本当に思います。繰り返し思っています。(p.188)

こうした、なんというか、行為とその行為の奥にあるデリケートな部分というかに、無神経な支援者であってはいけないよなぁと強く思う。

「あの保護者は子の障害を受け入れられていない」というようなことを(あるいはそれに近いメッセージを)、無頓着に言ってしまう(しまった)ことがある支援者はぜ一度読んでみて、自分の障害受容観を見つめなおしてみると良いと思う。