梅永雄二編著『こんなサポートがあれば<2> LD、ADHD、アスペルガー症候群、高機能自閉症の人たち自身の声』
こんなサポートがあれば! 2―LD、ADHD、アスペルガー症候群、高機能自閉症の
- 作者: 梅永雄二
- 出版社/メーカー: エンパワメント研究所
- 発売日: 2007/06
- メディア: 単行本
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以前書いた記事で取り上げた本の続編。出版が2007年なので、時期的には特別支援教育が始まったり、発達障害者支援法や障害者自立支援法など発達障害の存在に光が当たり始めてきたあたりのもの。
梅永雄二編著『こんなサポートがあれば<1> LD、ADHD、高機能自閉症の人たち自身の声』 - 猫も杓子も構造化
前作同様、今回も筆者が主催する成人の発達障害当事者による研究会のメンバー10名が寄稿しているほか、発達障害者の家族からの声、編著者による家族のサポートについての章が加えられており、最後には当事者の声をまとめ、当事者目線での10のサポートを提案をして締めくくっている。
支援者はいくら障害のありようについての知識を深めたところで客観的な事実は分かるようになるものの、当事者が主観的に感じる世界については知りようがない。彼ら彼女らが抱える主観的な困難さについては、テンプル・グランディンやドナ・ウィリアムズであったり日本だと東田直樹だったりが自分自身について書いたものを出版するようになって、少しは分かるようになったものの、支援者が直接経験可能なものではなく、想像をして知るしかないものである。ニーズに応える支援を行なうためには、当事者の声から学ぶ重要性というのは強調してもしすぎることはない。(そして、ニーズを伝える手段を持っていない当事者を支援する際には、ニーズを見極める目であったり、ニーズを引き出すコミュニケーションの技法であったり、より高い専門性が求められるように思う。)
以下読んで気になった点を何点か。
当事者からみた診断
以前『怠けてなんかない』(品川裕香著)でディスレクシアの当事者の声を読んだときも感じたことだが、当事者の多くが発達障害と診断されたことについて肯定的に捉えている(p.169)。自分の抱える困難さを、自分の努力や性格、人格などの要因と切り離して考えることができるようになったことと、それらの困難さに対する具体的な対処法を得られたことが肯定的な受容につながっているようだ。
ただ、これをもとに「どの時期のどの当事者にとっても診断は肯定的に受け止められる」と考えてはいけないと思う。本書に出てくる当事者の多くは遅い時期に診断がされている。成人になって周りからの理解をなかなか得られず、職場などでつらい目にあってきた期間が長いことも、診断に対する考えに影響をあたえているように思う。特に、学校教育段階の児童・生徒に対する場合(いわゆる診断の告知の問題)は慎重にならなくてはいけない。