猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

自閉症:「心の理論」を超えて

フリスとハッペによる次の論文を読んだ。

Autism: beyond "theory of mind". - PubMed - NCBI


前半は、心の理論の登場がどのように研究に影響を及ぼしたかというのがレビューされている。その後、心の理論では上手く説明できない自閉的特性の非社会的な側面を紹介した後に、弱い中枢性統合仮説がそうした特性を説明できることが紹介されている。

もう20年以上前の論文なのだが、大変勉強になった。とりわけ、心の理論が80年代後半の研究に与えた影響とその方法論(本文中では"fine cuts"という言葉で説明されている)が、弱い中枢性統合仮説を検証した初期の実証的研究に強い影響を与えていることが知れて良かった(本文中で明示的に書かれている訳ではないけど)。今までに読んだいくつかの研究の実験デザインの起源というか考え方が、研究の文脈の中に位置づけられて見通しは大分良くなった気がする。

研究の最前線を知るという点では、新しいものにあたるというのはとても大事なのだろうけれども(とりわけ「科学的」色彩が強い研究分野において)、理論の発展を追うにはその理論が登場した文脈を丁寧に追う必要があることを意識させられるものだった。