猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

2E教育について

自宅に『LD研究』が届いたので、パラパラと目を通す。

特集は昨年のシンポジウムの2E教育について。基調講演の後に話題提供が4件続き、その後に指定討論者のコメントが加えられるというスタイルである。

話題提供に目を通していて、2Eという概念が未整理な印象を受けた(あまり研究されていないのだからそりゃそうでしょうが)。話題提供の報告者の実践はそれぞれに多様なアイデアを提供するものに思うが2E教育の概念とどう関わるのがいまいち分からないものが多かった。通級指導教室の実践を報告した今西では最後の段落に申し訳程度に2Eの言葉が使われているだけであったし、小倉による青年のグループ活動の実践も自己理解にフォーカスを当てたSST風のありがちな実践で、西村による大学体験プログラムの報告も発達障害のある生徒の進学を支援するという点で必要なことに思うが、進学を支援することそのものが2E教育なのかは疑問であった。(大学に進学した発達障害者は皆exceptionalかというとそうでもないでしょう。)

吉原による横浜市での実践は才能を伸ばすということにフォーカスを当てている点で他の話題より、2Eとの関連が見出しやすそうに感じたが、一番関連が高そうなサマースクールによる高次の思考活動の実践報告においても、結局対象が希望者であるため、どんなexceptionalな生徒に対して、どんな特別な活動が提供されたのかのつながりが見えづらかったように思う。

全体的な感想としては、2E教育という概念の整理をもう少し丁寧に行った方が実りある実践が出てくるのではないかと思う。

シンポ企画者の松村の基調講演では、狭義と広義の2E教育を区分している。狭義については「診断・識別される障害と才能を併せもつ」として、広義については、「潜在的な障害と才能があるが、両方は診断・識別されない」とある。

前者についても後者についも、どうexceptionalな生徒の才能を識別あるいはその兆候を掴むかというのが重要に思う。というか、それをしないと議論が始まらないでしょう。発達障害の診断についていえば、チェックリストだの診断基準が確立しているが、才能の方についての識別法を確立しないことには、結局「発達障害の人には二重のニーズがあるかもしれないですね」という心構え的なものに終わってしまうだろう。それを、狭義の2E教育対象者を峻別するための公式の方法として使うかはさておき、ニーズが顕在化していないものについては必要な処遇が何かも分かるはずもない(発達障害界隈であれだけアセスメントが大事だと言ってきて、才能教育ではアセスメントの必要性がないなどといったことはまさか言うまい)。

まぁ、このシンポをきっかけにこれからやっていきましょうね、ってことなんですかね。

※ちなみにAmazonで「2E教育」で調べてみても、日本語の書籍は全然ヒットしないけど英語の書籍はたくさんヒットする。日本ではまだまだ始まったばかり(まだ始まってない?)なんですね。

Twice-Exceptional Gifted Children: Understanding, Teaching, and Counseling Gifted Students

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Twice-exceptional Students Participating in Advanced Placement

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Twice-Exceptional Kids: A Guide for Assisting Students Who Are Both Academically Gifted and Learning Disabled

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