猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

女性のASD当事者の障害を見えにくくする要因

自閉症スペクトラム障害の女性は診断に至るまでにどのように生きてきたのか:障害を見えにくくする要因と適応過程に焦点を当てて

読んだ。女性ASD当事者へのインタビューをもとに、ASDの障害を見えにくくする社会環境的要因を明らかにし、その中で当事者がどのように生きてきたのかについて検討した論文。

ふるまいの上では適応的に見えても内面では苦しんでいるケースなど、「語り」のデータならではの示唆がある。

ASDの女性は,女性として生きるライフサイクルの中で,社会的な期待と,ASD 特性による難しさの中で,適応の努力と失敗を繰り返す ことで,表面的には社会に適応しているように見えるよ うなスキルを学習するものの,失敗経験と自己否定的な原因帰属の積み重ねによって【自尊心の低下】が起こっていることが明らかとなった。そのため,ASDの女性 は外からは社会的なスキルが高く適応しているように見えても,心理的な健康度はそれほど高くなく,内面的な 支援が求められていることが示唆された。(p.95)

臨床的な示唆として、学校段階で「大人し くて目立たない子どもを見逃さない(p.96)」ことの重要性が挙げられている。教育現場で特別支援に関わる人はこのことを意識をして行動観察をしたり、担任やカウンセラーとの面談などの情報まで意識的に守備範囲を広げると良いのかもしれない。