猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

3つ組はセットで考えるべきか

link.springer.com

ASDを考えるときに有名な三つ組(triad)というものがある。これは、社会性、コミュニケーション、想像力の3つの症状からASDを考えましょうと、イギリスの児童精神科医のウィングが提唱したものである。

この三つ組を考えるとき、これらが単一の共通のメカニズムから出てきたものか、別々のメカニズムから現れてきたものかは冒頭のハッペとロナルドの論文以来、議論になってきたようだ。2014年にはAutismにおいてこれをテーマに特集号も組まれている。巻頭の編集者のコメントはアクセスがフリーでだれでも読める。

http://journals.sagepub.com/doi/full/10.1177/1362361313513523


ハッペらの論文では、双子研究のデータと関連論文のレビューを通して、三つ組はそれぞれが大部分独立した遺伝子によって現れる症状であるとの仮説を提案している。そして、そうした前提に立って進めていく研究を"the fractionable autism triad approach"と称し、新たな問いや理論的/実践的意義につながる可能性を論じている。

"fractionable autism triad"は日本語で紹介しているものはざっと調べたところなさそうだが、fractionが断片や破片とかの意味なので、「断片化可能な自閉症の三つ組」あるいはもう少し簡単に「分解可能な自閉症の三つ組」とでも言っておくべきだろうか。

この研究とは直接的に関係ないが、弱い中枢性統合仮説の最初期は心の理論障害の原因となるメカニズムだと想定してリサーチを進めていたのが、社会的な情報処理、非社会的な情報処理は別のメカニズムであると主張を変えるようになった歴史がある。

nekomosyakushimo.hatenablog.com

そんなことを考えながら、単一のシンプルな機構で捉えられない障害像の多様性というのがASD研究の持つ難しさなのかもしれないと再認識をした。そしてそれはDSM-Vでスペクトラムという範疇を採択したことにより、白か黒かのカテゴリーの話から濃淡の話になったのでよりモデルの構築に工夫が求められることを意味しているのかもしれないということを思った。