猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

ASDの視覚処理研究は母集団を適切に代表しているのか

Frontiers | Vision Research Literature May Not Represent the Full Intellectual Range of Autism Spectrum Disorder | Frontiers in Human Neuroscience


今までに行われてきたASDの視覚処理研究の研究参加者の属性についてIQの観点から検討した論文。いわゆるボーダーや知的障害圏内のIQに比べて、平均(IQ=90-110)やそれ以上のIQを持つASD者がより研究に参加していることを明らかにしている。想定されるASDと知的障害の併存率(40%)に対し、視覚処理の研究ではそれより少ない率(20%)しか知的障害の併存が認められないことから、サンプリングに偏りがあるとし、視覚研究の結果をASD全体のものとして一般化する危険性について論じている。

今後の研究に求められるものとして、IQ80以下であるASD者からもサンプリングしていくべきだとのことであるが、このサンプリングの偏りの背景にあるデータ収集に関わる難しさにも触れつつも、幼児実験のデザインや言語指示や注意の持続に頼らないテクノロジーの使用などなどを用いてデータを収集していく可能性に触れいている。