猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

Broader Autism Phenotypeについて

Broader Autism Phenotypeという言葉を知った。

Phenotypeというのは表現型と訳され、遺伝とかの研究の文脈で使われることが多い言葉である。生物に実際に現れる性質や形質のことを指す言葉で、遺伝子型と環境の相互作用によって表現型が決まるとされる。同じ遺伝子型を持っているからといって、表現型が同じだとは限らない。自閉症の文脈で言えば、自閉症に関与していると考えられる遺伝子型を持っていたとしても、表現型として実際に自閉症だと診断されるとは限らないということだろう。

ところで、家族や兄弟研究から自閉症に遺伝的関与があることは知られていて、診断されているかどうかはさておき、診断を受けた人の親族が自閉っぽい特性を持っていることは多い。また、自閉症スペクトラムとするのが最近の研究の流れであるから、診断を受けていない定型発達の人のなかにも、高い自閉的特性を持つ人がいることが知られている。

これらのことを考慮すると、「狭い自閉症表現型」として、診断を受けている群を研究する一方で、高い自閉的な特性を持つ人も含めた群を「広い自閉症表現型」として研究するアイデアが出てくる訳である。Broader Autism Phenotypeを日本語訳しているものが多くないが、「広い自閉症表現型」「幅広い自閉症の表現型」あるいはシンプルに「より広い表現型」と呼ばれているようだ。

【多分BAPという用語が初めて使われた論文】
Broader autism phenotype: evidence from a family history study of multiple-incidence autism families. - PubMed - NCBI