猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

『心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門』

心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門―エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」

心理職のためのエビデンス・ベイスト・プラクティス入門―エビデンスを「まなぶ」「つくる」「つかう」

近年、エビデンスという言葉をよく聞くようになった。しかし、その言葉が何を意味するのかということについて共通の理解がないままに使われるような場面にもよく出くわす。とりあえず何かしらの数量的なものが示されればそれがエビデンスだ、という人も見る。

この本は、エビデンス・ベイスドについて、心理職を対象に平易な言葉で解説している。エビデンスとはそもそも何であるのか(まなぶ)、どのようにエビデンスが産み出されるのか(つくる)、臨床に携わる心理職はどのようにエビデンスを活用すれば良いのか(つかう)、というように、心理職がエビデンスと関わる足場を提供してくれる。臨床家にも研究者にも役に立つ本だと思う。

丁寧な言葉でかかれた解説書であるが、精神力動学的アプローチを中心とした日本の臨床心理学については、ガラパゴス化していると結構手厳しい。

アセスメントの選択にしても、介入法の選択にしても「自分が習った」あるいは「自分が得意とする」ものに偏りがちなのは心理職も人間である以上しかたがないような気がするけれども、そうしたところと離れてエビデンスを吟味することがこれから必要になっていくのであろう。そのためには、メタ・アセスメント論とかメタ・介入法みたいな議論が必要なのではないかと、そんなことを考えながら読んでいた。