猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

Binet-Simon Scaleのアメリカへの導入に関連した調べ物

調べ物の記録。当時の時代の用法に従いfeeblemindedには精神薄弱の訳語をあてていますが, 当時の用法に従っただけで差別的な意図はありません。

Henry Goddardについて

Henry Goddardはクラーク大学を1899年に卒業してその後に, New JerseyのVinlandにある精神薄弱児(feebleminded)の収容施設付属の研究所のディレクターになった人である。1908年版・1911年版のビネーシモン式の知能検査を英訳したことで有名である。

Lewis Termanについて

Lewis Termanもまたクラーク大学の卒業生であり, スタンフォード大学の子供研究の教授になった人である。Termanが1916年に出したStanford-Binet式の知能検査はその後に世界中で使われることとなる。

Granville Stanley Hallについて

知能検査に関連してクラーク大学ではGoddardとTermanを輩出してるが, この二人を指導した人物はHallという人物である。HallはHarvard大学のWilliam Jamesのもとで空間知覚に関する研究で米国で最初にPhDを取得した人物であり, ライプチヒ大学で直接Wundtからも教えを受けたようである。PhD取得後はジョンホプキンス大学, クラーク大学とうつったようである。

Binet-Simon式の変質

ビネーとシモンは知能検査の作成において, あくまで特別な教育が必要である児童を識別する実用上の目的において作ったことを強調していたが, GoddardやTermanによる翻訳の際にはそうした用心深さは消えていたようである。当時の優生学の隆盛の中で, 「精神薄弱度合い」を測定する道具として使われるようになっていったようである

IQ70未満という操作的基準

GaltonやMendelを読み優生学を学んでいたGoddardはVinlandの子供達のきょうだいがまた精神薄弱であることに関心を持っており, その際の精神薄弱の操作的定義がIQ70未満であったようである。(ただしこの時期は標準偏差は15じゃないので2標準偏差という訳ではないはず)

Goddardはこうした研究からその後, 優生学的主張を強めるようになっていったようである。

参考

Greenwood, J. D. (2015). Intelligence defined: Wundt, James, Cattell, Thorndike, Goddard, and Yerkes. In S. Goldstein, D. Princiotta, & J. A. Naglieri (Eds.), Handbook of Intelligence: Evolutionary Theory, Historical Perspective, and Current Concepts (pp. 123–135). New York, NY: Springer New York.