猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

XBAの調べもの3

Cross-battery Assessmentの調べものの続き。前回記事はこちら。

nekomosyakushimo.hatenablog.com

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Ettenticals of Cross-Battery Assessment (Flanagan et al., 2013)のChapter 6はXBAの強みと弱みを解説している。雑に読んだ記録を残す。

強み

現代の知能理論に即している

CHC理論という理論的な基盤がしっかりしている。これは本の最初から何度も出てきているしCHC理論の理解がこのアプローチの基本となる。

専門家間のコミュニケーションを促進する

CHC理論に基づく分類によって用語の混乱等を少なくできる。これは, 化学における周期表であったり, 生物学における「門」に基づく分類のようなものをイメージしているらしく, 人間の認知機能についての共通語彙を提供することでコミュニケーションが円滑になるだろうということである。

計量心理学的に擁護可能な合成得点

合成得点の算出に算術平均を使うか, 下位検査の相関と信頼性に基づいて合成得点を出すのかの話で, 著者らは算術平均が好ましいと思っているが, テスト開発者は平均点による合成得点を批判する声も根強いため, 新しい解析ソフトでは下位検査の信頼性と相関に基づいた合成得点も出せるようになったそうだ。

SLDおよび文化的や言語的に多様な背景がある人への評価の質向上

SLDの評価では, 認知機能や神経心理学的プロセス, 学力スキルの明確な特定, もっとも関係のある情報をの取得, SLDの操作的定義に関連する構成概念を軽量心理学的に厳密な方法で測定可能なことなどが挙げられている(詳しくは4章を見ろとのこと)。

文化的・言語的多様性については, Culture-Language Test Classification (C-LTC)やCulture-Language Interpretive Matrix(C-LIM)という, 文化や言語の影響の程度を測定する機能が利用可能らしい(詳しくは5章を見ろとのこと)。

柔軟性

検査の主訴に応じて, 柔軟に検査を組み合わせることが可能ということ。一つの検査から答えられることは多くないが, 同時にあれもこれもと全部やるのは現実的でないので, 必要なものを必要に応じてという使い方がXBAの利点である。

自動化

XBAが提唱された初期は, 複雑で時間がかかるという懸念がありXBA用のソフトウェアを開発してこの本の2版からつけたとのこと。

弱み

ノルム・サンプルがない

他の検査のようなノルムがないのがXBAに寄せられた大きな批判だったようである。

複雑

従来の方法より複雑と感じられたようである。(でも, これは今までの検査が理論への理解なく使っていたことの裏返しであるとも)

時間がかかる

XBA用のソフトが出たことでだいぶ改善されたそう。