猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

太田昌孝ほか著『自閉症治療の到達点 第2版』

自閉症治療の到達点 第2版

自閉症治療の到達点 第2版

結構いい値段がするので買うのを躊躇していたのだが、結果としては買ってみて大満足だった。これだけ充実した内容が6000円とちょっとで手に入るのであればむしろ安いといえると思う。一通り読みはしたのだが、内容は広範かつ専門的でとてもすべてを咀嚼できたとは言いがたいので、今後も繰り返し読んでいくのだろうが、とりあえず初読の感想を残しておこうと思う。

太田ステージによる認知発達治療は随分と科学的であることに厳密なんだなぁ、というのが読んでみてまず受けた印象だ。今まで、太田ステージに関連ある本だと『自閉症療育の宝石箱』(日本文化科学社)や『発達支援と教材教具』のシリーズ(ジアース教育新社)は読んでおり、太田ステージが何を測っており、そのアセスメントの結果をどう療育や日々の関わりににつなげていくかの基本的な部分は知っていたのだが、今回この本を読んでみてその背景となる理論的な基盤をしっかりと知ることができたのはとても良かった。とりわけ、「太田ステージの開発」の章では、どのようにして各ステージ設定の妥当性を確かめてきたかの経緯が丁寧に書かれており、アセスメントの開発・発展という視点で読むと得るものがとても多いと思う。

また、比較的TEACCHオタクである自分にとっては、太田ステージとTEACCHの関係が共通点と相違点で整理されていたのも嬉しかった。各々の用いているアセスメント(太田ステージとPEP)の相関であったり、発達課題の内容や課題構成を比べることで、ASDに対する治療教育の考え方の違いについて以下のように書いている(p.86)。

TEACCHでは年齢の低いうちから一貫して家庭や地域社会で直接役立つスキルの獲得を目標にしている。これに対して、太田ステージでは、ASDの発達の障害に働きかけて認知と情緒の発達を促すことを重点にしつつ、将来のより広い適応行動の獲得を目指すことに目標を置いている。

わたしは、どちらの発達課題も実践で用いているが、これらの相違点を知っておくことは、課題の取捨選択であったり重点的な内容を決める際に大いに参考になると思う。



本書はASDの教育・療育を行う際に、一つの指針、それもかなり信頼が置けて洗練されている指針を与えてくれると思う。必要に応じて随時参照しながら、自分の実践の土台として活用していきたい。