猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

論文メモ

ウェクスラー式検査をちゃんと扱おう論文

www.jstage.jst.go.jp 成人発達障害者の臨床を念頭においてウェクスラー式の検査の留意点について丁寧に書いてある。オープンアクセスだしおすすめ。 論文に直接書かれている訳ではないけど, 最近ADHDの成人の状態像についての論文を読む中で高機能だと適応…

Fisher流とNeyman-Pearson流とp値と心理学と

www.jstage.jst.go.jp 日心のシンポで知り読んだ。大変勉強になる論文だった。 Fisher は p 値を,統計家がデータの解析結果を「報告」するときのモノサシと位置づけ,比較試験の結果,効果があったか否かの「判定」は,臨床試験の主査である医師が単独ある…

WISC-ⅣはFSIQの解釈のみで十分!?

次の論文にさらっと目を通した。 Structure of the Wechsler Intelligence Scale for Children – Fourth Edition in a Group of Children with ADHD ADHD児を対象にWISC-Ⅳのデータについて確証的因子分析でいろいろなモデルを比較したというもの。 論文の内…

筆記具の持ち方について

小学生の低学年では、「用具を正しく持つ」という内容が学習指導要領に明示されており、鉛筆の持ち方を指導する姿はどこの学校でも見られる。もちろん、その指導の丁寧さであったり力の入れ方は担任の先生のさじ加減であり、いくつもの学級を見ているとその…

認知の発達段階とピアジェについて

ピアジェについて調べ物をしている。自分にとってのピアジェは太田ステージによる認知発達治療に理論的基礎を与えている人で、『自閉症療育の宝石箱』や『自閉症治療の到達点』で得た理解がベースであった。 太田ステージによる自閉症療育の宝石箱作者: 永井…

発達障害と姿勢や身体の動きについて

仕事で小学校等を訪問していて、低学年の指導において姿勢や鉛筆の持ち方を丁寧に指導している学級を見た。クラスの子たちの字の形は大変整っといる印象を受けたが、そういえば自分はあまり姿勢とか身体の動きとかを熱心に調べたことがなかったと思い、次の…

罰なき社会と学校社会と

学校社会に外から関わるようになり、「学校的」な考えのようなものに違和感を覚えることが以前より増した。昨今では、張り手や竹刀で叩くといった分かりやすい体罰はあまり見ないが、学校は罰的なものに満ち溢れている。「そんなことばかりしていると連絡帳…

文字への注視を促す支援は

自閉症児・知的障害児における文字への注視を促す支援教材に関する視線分析研究文字への注視を促す支援方法の違いを視線計測によるデータから検討した論文。自閉症児23名、知的障害児12名を対象に、指示棒、アンダーライン、音声の3つの支援方法と、教材の…

ASDの視覚処理研究は母集団を適切に代表しているのか

Frontiers | Vision Research Literature May Not Represent the Full Intellectual Range of Autism Spectrum Disorder | Frontiers in Human Neuroscience 今までに行われてきたASDの視覚処理研究の研究参加者の属性についてIQの観点から検討した論文。い…

Spearman(1904)のメモ

"General Intelligence," Objectively Determined and Measured on JSTOR長い。90ページもあるのはやめてほしい。全ての知的活動の根底にあるg因子を発見したということで知能の二因子論の始まりとなる論文なわけだが、この時点ではまだg因子という言葉は使…

ASDと心の理論と

先日の記事で「心の理論」のチンパンジーを対象とした元論文について書いた。nekomosyakushimo.hatenablog.com書いている中で、そういえば私はバロンコーエンのオリジナルも読んだことが無かったことに気がついたのでそれにも目を通してみることにした。Does…

チンパンジーと心の理論と

ASD児者が心の理論に障害を持っているという仮説は、イギリスのバロンコーエンが最初に提唱したものである。少し詳しい人であれば、この心の理論というのは最初は、霊長類研究者であるプレマックとウッドルフがチンパンジーについて検討したものだということ…

3つ組はセットで考えるべきか

link.springer.comASDを考えるときに有名な三つ組(triad)というものがある。これは、社会性、コミュニケーション、想像力の3つの症状からASDを考えましょうと、イギリスの児童精神科医のウィングが提唱したものである。この三つ組を考えるとき、これらが…

女性のASD当事者の障害を見えにくくする要因

自閉症スペクトラム障害の女性は診断に至るまでにどのように生きてきたのか:障害を見えにくくする要因と適応過程に焦点を当てて読んだ。女性ASD当事者へのインタビューをもとに、ASDの障害を見えにくくする社会環境的要因を明らかにし、その中で当事者がど…

自閉症:「心の理論」を超えて

フリスとハッペによる次の論文を読んだ。Autism: beyond "theory of mind". - PubMed - NCBI 前半は、心の理論の登場がどのように研究に影響を及ぼしたかというのがレビューされている。その後、心の理論では上手く説明できない自閉的特性の非社会的な側面を…

ソーシャルストーリー概観論文

岡田信吾・大竹喜久・ 柳原正文 (2009). 発達障害児に対するソーシャルストーリー(TM)研究の概観. 岡山大学大学院教育学研究科研究集録, 141, 11–28.発達障害児に対するソーシャルストーリー(TM)研究の概観 - 岡山大学大学院教育学研究科研究集録 141巻 - 雑…

ABA対TEACCH論文

ABA versus TEACCH: the case for defining and validating comprehensive treatment models in autism. - PubMed - NCBI自閉症への介入プログラムは様々あるが、それらの中でも有名なABAとTEACCHに焦点をあててそれらの社会的妥当性(social validity)を検討…

ASD児へのPECSによる介入のメタ分析論文

Effectiveness of the Picture Exchange Communication System (PECS) on Communication and Speech for Children With Autism Spectrum Disorders: A Meta-Analysis | American Journal of Speech-Language Pathology | ASHA PublicationsPECSの効果につい…

グラフの視覚的な読み取りについて英語で言うと...

Focus on Autism and Developmental Disablitiesの最新号のabstractを流し読みしていたら、次のような書き方を見つける。 According to the visual analyses, students performed better with adapted and interactive video clips. Evmenova, Graff, Behrma…

RTIの解説論文

Fuchs, D., & Fuchs, L. S. (2006). Introduction to Response to Intervention: What, why, and how valid is it? Reading Research Quarterly, 41, 93-99.Introduction to response to intervention: What, why, and how valid is it? - FUCHS - 2006 - Re…

心理検査の標準化とサンプル数

服部 環, 藤田 和弘, 石隈 利紀, 青山 眞二, 熊谷 恵子, 小野 純平(2014).日本版KABC-IIの尺度構成と標準化. 日本教育心理学会総会発表論文集 (56), 276, 2014-10-26CiNii 論文 - PB023 日本版KABC-IIの尺度構成と標準化(測定・評価・研究法,ポスター発表B)…

プログレス・モニタリングの妥当性の検証について

海津先生の書いた次の論文を読んでいる。海津 亜希子(2016). 算数につまずく可能性のある児童の早期把握 ― MIM-PM算数版の開発 ― 教育心理学研究,64, 244-255.算数につまずく可能性のある児童の早期把握 「算数版のMIM-PMを作って、その妥当性と独自性を確か…