猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

発達性協調運動障害の本を読んだ

発達性協調運動障害

『発達性協調運動障害』(学苑社)

発達性協調運動障害に関する本を読んだ. 発達障害というとLD, ADHD, ASDの3障害を想定する人が多いと思うが,これらの障害がある人の多くが, 発達性協調運動障害を併発していることは以前から指摘されており, 実際の支援の際にはこれらの不器用さの支援も合わせて必要になる.

この本は, まぎれもなくこの分野を牽引している研究者が書いている本で大変信頼がおける. また, 最新の研究成果が紹介されているので, DCDの支援が業界でどのように評価されており, 何が効果があるとされているかの情報がまとまっており, 運動に苦手さがある人を支援する際に知っておかなければならないことがわかるようになっている.

気になった点

以下, 読んでいて付箋貼った点を残しておく.

以上をまとめると. DCDのある子の介入研究に関しては, 質の高い一次的な介入研究もそれを厳密に調べ, 再分析したステマティックレビューとメタ分析も, 非常に数が少ない。そして.介入をすれば, しないよりも発達性運動検査の得点が向上するというエビデンスは存在しないのである。もちろん、こうした最新の科学的知見も将来,再度,覆されたり,まったく新しい有効な介入法が開発されるかもしれない。ただし現在.こうした知見を活かしてDCDのある当事者をとりまく親や臨床家にできることは, 介入によって発達性運動検査の得点をさせようとするのではなく, DCDのある当事者の言葉や経験に耳を傾け,日常生活の不便さを解消し,家庭や学校や地域の活動に参加できるように支援を整えることであろう。(p.30)

介入のエビデンスについて. 運動能力そのものを介入で向上させようとする試みにエビデンスは(まだ)ない.

ステマティックレビューでも, 報告により28から67%と幅があるものの, メチルフェニデートのAD/HDにおける協調への効果を認めている。(p.60)

メチルフェニデートで協調が改善するとのこと.

DCDを示す子どもへの過程指向型アプローチによる介入効果については, 子どもによっては改善されることもあるかもしれないが,十分な根拠は示されていない。(p.75)

最初に引用したところと同じく, 過程指向型のアプローチはエビデンス不足. その一方で, 課題指向型アプローチは有効かもしれないとのこと.

DCDを示す子どもに対しては,「介入として課題指向型アプローチが有効である」「CO-OP (Cognitive Orientation to daily Occupational Perfbrmance)やNTT (Neuromotor Task Training)などの課題指向型アプローチによる介入を推奨してもよいかもしれない」と示されている. (p.79-80)

それらが紹介されている国際ガイドラインらしい. 読んだ方がよさげ(オープンアクセスだし).

https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/dmcn.14132

感覚統合とか

以前, 感覚統合のエビデンスについてこのブログで取り上げたけど, そこで得た感触とも概ね一致している.

nekomosyakushimo.hatenablog.com

支援者としては, 課題指向型の支援・援助のレパートリーを増やすことが大事かしらね.