エクスクルーシブなインクルージョン
- 作者: メアリー・ウォーノック,ブラーム・ノーウィッチ,ロレラ・テルジ,宮内久絵,青柳まゆみ,鳥山由子
- 出版社/メーカー: ジアース教育新社
- 発売日: 2012/03/15
- メディア: 単行本
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必要があってこの本を読んでいる。その中で次のような記述を見つける。
通常学校が不適切であると思われる子どもたちの中で、自閉症、すなわち自閉スペクトラムのいずれかの段階にあると診断された子どもの数が増加している。私たちは、このような子どもたちにとって、通常学校における「インクルージョン」は要するに何を意味するのか、そして、それは彼らにとって果たして良い経験になっているのかを問う必要がある。現状では、多くの場合、それは苦痛な「エクスクルージョン」の経験となっているように思われる。(ウォーノック, 2012, p.43)
日本でもインクルーシブ教育を進めましょうという方向性であるし、その流れで交流・共同学習を進めましょうということもよく言われる。それで、活動の場所は一緒になってみたものの、ただのお客さんだったり、ほぼほぼ支援者の介助で活動に参加していたりすることが多いという話も知り合いから聞く。
書かれているように、その場で行われる学習が「参加者にとってどういう経験なのか」をしっかり考えないとね。
正の強化・負の強化という言い方をやめにしよう
表題の通りの主張です。代わりに「好子出現の強化」「嫌子消失の強化」を使うと良いと思う。
なぜこんなことを思ったのかと言うと、先日「行動分析の専門家」を自称する人が負の強化を誤った用法で解説しているのを聞いたからである。その人はストーカーを例に出しながら、被害に遭っている人から「キモい」とか「やめて」とか言われたりするのが、「しつこく電話する行動」を強化していると説明し、このようなネガティブな内容でも行動を強化することがあることを「負の強化」だと説明していた。
この説明は完全に誤りである。被害に遭っている人からの「キモい」だの「やめて」だの反応がストーカーにとっての好子な訳だから、これは典型的な「正の強化」である。しかし、その専門家は「負の」という言葉のイメージに引きづられて、勘違いしてしまっている訳であった。
好子出現と嫌子消失という言い方にすれば、すくなくとも消失されているものは何もないだろうと気づいて、そんな誤解もなくなるだろう。
ソーシャルストーリーとソーシャルナラティブ
ASDへの実践の文献を読んでいるとsocial narrativesという語によくあう。実践の内容や説明を見ているとソーシャル・ストーリーとほぼほぼ一緒なのだが、こっちの言われ方の方がよく見かける。
で、何か違うのかと調べていたら次のようなサイトを見つける。
要するにソーシャルストーリーという名称はキャロルグレイが商標登録したから、公認をされないと使ってはいけないという事情があり、内容にあまり違いはないらしい。
CiNii論文検索でソーシャルストーリーをキーワードにすると28件、ソーシャルナラティブだと2件で、日本だとソーシャルストーリーの方が使われているようだ。(全部が公認を受けた人が使っているかはさておき)
ソーシャルナラティブという用法を日本でおそらく初めて用いたであろう藤野・米山(2009:415)には、用語について以下のような注があった。
「ソーシャルストーリーTM」という名称は米国において 商標登録され,現在では Gray による公認を受けなけれ ば,この名称を使った講演,研修会,研究発表などを行 うことは許可されていない(Gray, 2006)。一方,Myles, Trautman, & Schelvan(2004)はソーシャルストーリーTM に代表される社会的状況の意味を説明し望ましい行動の 見本を記述した物語を使った支援方法の一般呼称として“Social Narrative(ソーシャルナラティブ)”という名称を 創案し使用している。本稿でも Myles らにならい,この ようなタイプの教育技術を「ソーシャルナラティブ」と 総称することにした。また先行研究で“Social Stories” を使用したと記載している論文でもGrayによる公認を受けたことが明記されていないものは“Social Narrative(ソーシャルナラティブ)”を使用したものと解釈し,本稿ではそのように表現した。
発達障害児に対するソーシャルナラティブによる介入の効果 : 行動上の問題の改善とソーシャルスキルの向上について: 東京学芸大学リポジトリ
私もGrayに公認を受けた訳ではないので、今後はソーシャルナラティブで通していこうかな・・・
(今度ストーリーの研修受けるけど)
続・シングルケース研究のグラフをRで描く
昨日の記事では折れ線グラフに白線を重ねて一部の線を消すなんて面倒くさいことをしたのだけれど、よくよく考えれば最初からデータを分けて入力してプロットすればいいだけの話であった。
データの準備の時点でフェイズごとにデータを分けて用意する。
#データ入力 phase1<- c(1:5) #ベースライン回数 selfinjury1 <- c(7,9,8,12,8) #ベースライン期の自傷行為の回数 phase2 <- c(6:20) #介入期期回数 selfinjury2 <- c(5,6,4,5,4,2,1,1,3,2,2,1,0,0,1) #介入期の自傷行為の回数
そして、それぞれのデータを共通のx軸、y軸でplot。
#ベースラインをプロット plot(phase1, selfinjury1, type="o", #マーカーと線を重ねる時はo pch=16, #●は16 xlim = c(0,20), #x軸の範囲を指定 ylim = c(0,12), #y軸の範囲を指定 xlab = "セッション回数", ylab = "自傷行為の生起頻度(回)" ) #グラフの上書きを指定 par(new=T) #介入期をプロット2 plot(phase2, selfinjury2, type="o", #マーカーと線を重ねる時はo pch=16, #●は16 xlim= c(0,20), #x軸の範囲を指定 ylim= c(0,12), #y軸の範囲を指定 xlab="", #軸のラベルを指定しないと変に重なる ylab="" ) #垂線を描く abline(v=5.5,lwd=2,lty=2)
こっちの方が断然簡単でしたね。
シングルケース研究のグラフをRで描く
シングルケースデザインの研究は折れ線グラフをよく使いますが、そのグラフをRで描く方法を調べたのでその備忘録を。
とりあえず仮想的なデータを作って見ます。指導のセッションの回数を重ねる毎に自傷行為の生起頻度がどう変化していったかのようなケースを想定してみましょうか。
#データ入力 session <- c(1:20) #セッション回数 selfinjury <- c(7,9,8,12,8,5,6,4,5,4,2,1,1,3,2,2,1,0,0,1) #自傷行為の回数
で、これをもとにとりあえず折れ線を作ります。
plot()関数のプロパティでtype="b"を指定すると、線とマーカーのついた折れ線グラフが書けるようです。
#マーカー付き折れ線グラフ plot(session, selfinjury, type="b")
なんかあまり、研究論文っぽさがないのでちょこちょこといじります。
#マーカー付き折れ線グラフ2 plot(session, selfinjury, type="o", #マーカーと線を重ねる時はo pch=16, #●は16 xlim= c(0,20), #x軸の範囲を指定 ylim= c(0,12) #y軸の範囲を指定 )
だいぶそれっぽくなりましたが、ベースラインと介入期の線を切りたいですね。
特定の線だけ消す方法を調べてみたのですが見つからなかったので、
やや強引ではあるものの白い線のグラフを上に重ねて強引に消すことにします。
セッション回数5までがベースラインで、6以降が介入期と想定します。
#上書き用データを入力 session2 <- c(5,6) selfinjury2 <- c(8,5) #グラフの上書きを指定 par(new=T) #白の折れ線を重ねる plot(session2, selfinjury2, type="l", #マーカーを描かないの時はl col="white", #白で重ね書き lwd=3, #太めにしないと隠れきらない xlim= c(0,20), #x軸の範囲を同じに指定 ylim= c(0,12), #y軸の範囲を同じに指定 xlab="", #軸のラベルを指定しないと変に重なる ylab="" ) #グラフの上書きを指定 par(new=T) #白線で削れた点を復元する plot(session2, selfinjury2, type="p", #店のみの時はp pch=16, #●は16 xlim= c(0,20), #x軸の範囲を同じに指定 ylim= c(0,12), #y軸の範囲を同じに指定 xlab="", ylab="" )
スマートではない方法ですが、それっぽくはなりました。
ポイントとしては、軸の範囲を重ねる元のものと同じにしないとうまく重ならないことと、
重ねる白線の太さを微妙に太くすることでした。(でないともとの線の縁が微妙に残る)
最後にフェイズを分ける垂線を描いておしまいです。
#垂線を描く abline(v=5.5,lwd=2,lty=2)
効率は良くなかったのかもしれませんが、大分それっぽいものが描けました。
ソーシャルストーリー概観論文
岡田信吾・大竹喜久・ 柳原正文 (2009). 発達障害児に対するソーシャルストーリー(TM)研究の概観. 岡山大学大学院教育学研究科研究集録, 141, 11–28.
発達障害児に対するソーシャルストーリー(TM)研究の概観 - 岡山大学大学院教育学研究科研究集録 141巻 - 雑誌 一覧 - 岡山大学学術成果リポジトリ
ソーシャルストーリーの介入効果を定量的に検討している研究を国際誌を中心に概観している。実験計画や対象者、標的行動などそれぞれの研究の概要がまとまっており大変便利。
ソーシャルストーリーは家庭でも学校でも容易に使用でき、対人行動の有力な指導法として期待されているため研究報告も年々増えているのだが、その単独での介入効果は高くなく、ストーリーの構成要件がどのように介入効果を変えるのかについての研究が必要であると、著者らはまとめている。
Boelt他『Autism Spectrum Conditions: FAQs on Autism, Asperger Syndrome and Atypical Autism Answered by International Experts』
- 作者: Sven Boelte,Joachim Hallmayer
- 出版社/メーカー: Hogrefe Publishing
- 発売日: 2013/09/04
- メディア: Kindle版
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書名の通りの本で、ASDについてよく聞かれる質問に、それぞれ当該の分野を専門とする研究者が2,3ページ程度で答えていく本。詳しく知ろうと思うとこの本だけでは当然情報量は足りないが、あまり明るくない分野については簡潔にまとまっていて次に読むべきものなども分かるので結構役に立つ。