猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

続・自由度について(別証明編)

前の記事までで、標本のデータから母分散を推定するには、n-1で計算した不偏分散を用いると不偏推定量が得られることについて書いてきた。

nekomosyakushimo.hatenablog.com
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今回はそのことについての別の観点からの学習メモ。

標準正規分布 N (0, 1 )からのn個の独立な標本値の平方和は自由度 n \chi^2分布に従うことが知られている。

   \displaystyle \chi^2 = \sum^n_i \big( \frac{x_i - \mu}{\sigma} \big) ^2

このとき、 \muではなく \bar{x}を用いたものは、自由度が1減り n - 1 の \chi^2分布に従う。

   \displaystyle \chi^2 = \sum^n_i \frac{(x_i - \bar{x})^2}{\sigma^2}

この式は

   \displaystyle \skew{0}\hat{\sigma}^2 =  \frac{\sum^n_i (x_i - \bar{x})^2}{n -1 }

を用いると次のように変形できる。まず、分子分母に n - 1をかける。

   \displaystyle \chi^2 = \sum^n_i \frac{(x_i - \bar{x})^2 (n - 1)}{(n - 1) \sigma^2}

次に、  \frac{\sum^n_i (x_i - \bar{x})^2}{n -1 } \skew{0}\hat{\sigma}^2に置き換える。

   \displaystyle \chi^2 = \frac{(n - 1) \skew{0}\hat{\sigma}^2}{\sigma^2}

ところで、自由度 n \chi^2分布の平均値はその自由度nに等しいことが分かっている。前の式の \chi^2の自由度は n-1であるので、次の式で表せる。

   \displaystyle E(\chi^2) = E \big( \frac{(n - 1)\skew{0}\hat{\sigma}^2}{\sigma^2} \big) = \frac{(n - 1)}{\sigma^2} E (\skew{0}\hat{\sigma}^2) = n - 1

ここで最右辺とその1つ左の式を変形すると次の式が導ける。

   \displaystyle E(\skew{0}\hat{\sigma}^2 ) = \sigma^2

つまり、不偏分散の標本分布の期待値は、母分散に一致するということである。これは、不偏分散が母分散の不偏推定量であることの \chi^2分布を用いた証明である。

【参考】
『基本統計学』(有斐閣