猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

死人テストあれこれ

調べたことを書いてみようのコーナー。

行動分析で使われる「死人テスト(Dead-man test)」。考えたのはLindsleyという研究者で1965年が初出らしい。どういった経緯でこの考え方が出てきたかなど調べるため原典をあたろうと思ったのですが、なかなか見つからなかったので、代わりに同じ著者が1991年に書いた論文を読んでみました。

Lindsey, O.R. (1991). From Technical Jargon to Plain English for Application. Journal of Applied Behavior Analysis, 24, 449-458.

Precision Teaching Hub and Wiki / The Dead Man Test



まず、死人テストというのは応用のためのテスト(Application test)の内の一種であるらしい。行動分析の原理を実際に応用するときに、実践家には難しい決断が求められるのだが、その決断を助けるために応用のためのテストは使われるのだと書かれている。

[S]imple application tests can help practitioners make difficult decisions in applying behavior analysis. (p.457)


難しい決断の例として、行動の形式、行動、行動の結果などを区別をすることが挙げられている。

The important distinctions between the form of the behavior, the behavior, and the results of the behavior are often difficult for beginning practitioners. (p.457)


死人テストが紹介される文脈で特に言及されるのは教室での研究(Classroom Research)である。1965年当時は、著者によれば、信憑性の低いおそまつな行動の測定が数多くなされていたらしい。例としては、算数のときに机に座っている時間をただ計測したのものを「課題に取り組んでいる時間」としていたり、単にかんしゃくが起きていない時間を計測したものであったり、が挙げられている。

In1965, we were plagued by a rash of very poor alleged "measures" of classroom behavior. The educational research journals were publishing studies with "time on task" that were actually only records of minutes spent siting at a desk in arithmetic position. Another equally virulent measure was minutes spent without a tantrum. (p.457)


こうした状況を改善するため、実践家が行動を測定する際にシンプルで分かりやすいガイドラインとして死人テストは考案されたらしい。なので、行動分析の原理や理論的な問題を考える際に死人テストを扱うのはおそらく適しておらず、あくまで実践家が「応用」をする際に助けとなるものという位置づけが正しいのだろう。


ちなみに、この論文は、行動分析の原理が多くの人に正しく応用されるためには、専門用語から簡単な英語に「翻訳」する必要があるという前提に立ち、その「翻訳」の手続きをまとめることを目的としている。

専門用語を簡単な英語に直したリストが載っているのだが(p.454)、「分かりやすい!」と思うものから、「う〜ん、これ分かりやすいか?」と思うものまであるので、興味のある方は見てみると面白いと思います。




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