猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。ブログ名にあまり意味はありません。

国際生活機能分類(ICF)について調べてみた

調べたことを書いてみようのコーナー。

今回は、特別支援教育関係の色々な本に出てくるけど、いまいちよく分かっていなかった「国際生活機能分類(International Classification of Functioning, Disability and Health:ICF)」について。

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この図で有名なやつです。(図は厚生労働省のページより)

参考としているのは、厚生労働省のこの2つのページ。
「国際生活機能分類−国際障害分類改訂版−」(日本語版)の厚生労働省ホームページ掲載について
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2007/03/dl/s0327-5l.pdf

間違った知識を広めないように努めますが、識者の方はもし間違っている内容を発見したらコメント欄でやんわりとご指摘お願いします。

そもそもどんなもの?

ICFとはすご〜く簡単に言ってしまえば、人の健康関係の事柄を記述する際に使う分類である。「d450は歩行に関すること」というように、アルファベットと数字で人の健康に関連する事柄を分類する。「d450.3」のように、「.」で区切り、その後に数字(評価点)をつけることで、「歩行については重度の問題がある」といったように健康レベルも表すことができる。

健康の状況を記述する分類が定まっていれば色々と便利である。例えば、人々の健康に関する統計的なデータを集めようとする際には、一人ひとりをバラバラの仕方で記述するのでなく、「d450.2が〜人、d450.3〜人」などといったように、共通の枠組みがあることによって、正確かつ効率的に健康状況を記述し処理することができる。

WHOによれば、ICFは「統一的で標準的な言語と概念的枠組みを提供することを目的として」開発されたものである。

「生活機能」って?

ICFでは健康関連の領域を、身体、個人、社会の視点から分類することで幅広い範囲を取り扱うことができる。上の図の、中段左にある「心身機能・身体構造」は主に身体についての領域、真ん中の「活動」は個人の能力や行為の遂行についての領域、右側にある「参加」は社会との接点における領域である。

例として、ADHDのAさんをICFの分類で考えてみる。心身機能・身体構造の点では「b140注意機能」に問題があり、活動の点では、「d160注意を集中すること」に制限があり、参加という点では「d850報酬を伴う仕事」への参加が制約されているという分類、記述が可能かもしれない。もちろんこれは一例であり、ADHDがあるからといって「d850報酬を伴う仕事」への参加が必ずしも制約されるというわけではない。ただ、ここで重要なのが、健康状況を記述し分類する際には、個人の活動や社会への参加という視点も持たなければならないということである。

これら3つの領域(「心身機能・身体構造」「活動」「参加」)全てを包括する用語が「生活機能」である。これらの領域は当然のことながら、それぞれに相互に作用しながら、一人ひとりに違った健康状況を作り上げている。ICFでは、「生活機能」という枠組みを使って、包括的に健康の状況を分類し記述することを目的としている。

「障害」って?

「生活機能」は3つの領域における分類を、肯定的な側面に着目した際に使う言葉であるが、それぞれの領域は否定的な側面に着目することもできる。すなわち、「心身機能・身体構造」を「機能障害」として、「活動」は「活動制限」として、「参加」は「参加制約」として捉えることができる。

「機能障害」「活動制限」「参加制約」を包括する用語が「障害」である。なので、「生活機能」と「障害」は健康状況に関する分類の裏表であるとICFは考えている。

ここで大事なのが、「障害」は単なる心身機能の障害にとどまらず、個人の活動の状況や、社会への参加の状況をも含む概念だということである。

ICFは、障害と生活機能を理解するにあたって、「医学モデル」と「社会モデル」の統合を目指している。「医学モデル」とは、障害を個人の現象としてとらえる立場で、治療的なアプローチから解決を目指していく。「社会モデル」とは、障害を社会によって作られた問題としてとらえる立場で、社会環境を改善することによって解決を目指していく。これら2つのモデルを統合し、括的に障害と生活機能を捉えるために、「生活機能」および「障害」の概念は提案されたのである。

環境因子の重要性

ICFの特徴の一つとして、環境因子を枠組みの中に加えたことがある。環境因子は、活動の状況や社会への参加に大きく影響をおよぼす。例えば、ADHDのBさんが教室で学習をする場面を考えてみる。ごちゃごちゃと刺激の多い教室で授業を受けるのか、「学びのユニバーサルデザイン」を意識し、不要な刺激がない教室で授業を受けるのかによって、心身機能・身体構造として「注意機能」に問題があったとしても、活動として「注意を集中すること」の状況は大いに変わってくるだろう。

ICFでは、こうした環境因子も健康状況を記述するための一部としてとらえて、分類のコードを与えている。

(ちなみに、ライフスタイルや習慣、社会的背景といった個人因子も健康状況に影響を及ぼすものとして捉えられているが、社会や文化によって大きく違いがあるとの理由から、分類はされていない。だが、個人因子と環境因子の2つが背景因子として生活機能および障害の在り方に影響を及ぼしているという考え方の枠組みは重要である。)

プラス面への着目

ICFの別の特徴して、生活機能という概念を扱うことで、健康状況のプラス面へ着目できるようになったということがある。

ICFの前身は、国際障害分類(International Classification of Impairments, Disabilities and Handicaps:ICIDH)というものである。この分類では、人の「機能障害」が「能力低下」を引き起こし、それが「社会的不利」を形成していくという因果関係をモデルとしながら障害を分類していく。したがって、人の健康状況のマイナス面に着目をした分類であった。

このモデルは障害を考える際に、その視野を個人や社会にまで広げた点ではとても意味のあるものである。しかし、機能障害が必ずしも社会的不利を引き起こすわけではないこと、周囲の環境によって能力や社会的不利の状況は大きく変わることなど、ICIDHで説明できないケースもあることからICFは開発された。

マイナス面を分類して障害を考えていたものが、健康状況のプラスもマイナスも分類することで、障害者も健常者も包括的に扱うことができるモデルとして作られている。

ICFには、以下のように書かれている。

ICFは,障害のある人だけに関するものとの誤解が広まっているが,ICFは全ての人に関する分類である。あらゆる健康状態に関連した健康状況や健康関連状況はICFによって記述することが可能である。つまり,ICFの対象範囲は普遍的である。




と、ここまで調べたものをつらつらと書いてみましたが、特別支援教育界隈だと、分類としてがっつり活用という例はあまり見ないような気がします。そこらへんの活用事例的なものがあればこんどまた調べてみようと思います。