発達障害アセスメント本
黒田先生編集の以下の本を読む。
『これからの発達障害のアセスメント:支援の一歩となるために』(金子書房)
コンパクトなのに必要な情報が大変よくまとまっていて, 現場で発達障害に関わる人は読んでおいて損はない。適切は支援は正確な評価から始まるとおもうので, 評価のレパートリーを増やしていく必要があるとともに, その持ち味をしっかりと理解して, 必要なアセスメントを選べることが重要なのだろう。
(Amazonでは新品の取り扱いがないが, まさかの絶版?)
以下, 自分のためのメモ。
1章
- 特別支援教育の根幹は個別の教育支援計画
- その計画のためには多面的なアセスメントが不可欠
- 特性の活かし方を考える第一歩がアセスメント
- 包括的アセスメントの必要性(Goodman & Scotto, 2005)
- スクリーニング→ 障害種に特化したアセスメント → 並存疾患・身体疾患・適応状態・社会心理的・環境的状態のアセスメント
- 発達障害に特化したアセスメントは大きく分けて「スクリーニング」と「診断・評価」用
- 知的水準・認知特徴のアセスメントの意義→行動はこれらの水準によって大きく影響を受ける(社会性の期待値は発達水準によって異なる)
- 適応水準の把握も最終的な支援の目標が日常生活の適応の向上であるなら必要(Vineland-II適応行動尺度など)
- 感覚の問題はDSM-VでASDの診断基準にあるのでとるのも望ましい
- フォーマルアセスメントとインフォーマルアセスメントの適切な組み合わせ大事(しかし適切って言うは易く行うは難しなような?)
- 支援の始まりは、本人や保護者へのフィードバックから(行動特徴の理解が始まることも)
- フィードバックは、発達障害に関する心理教育となるべき
2章
ASD
- 1次スクリーニング(一般集団向け)と2次スクリーニング(疑いある人向け)
スクリーニング用
- M-CHAT(16-30か月、親評定式)
- SCQ(生活年齢4歳以上, 質問紙)
- AQ(成人用16歳以上と児童用7-15歳, 質問紙)
- SRS2(3歳児用2:6-4:6,学齢期用4-18歳, 成人用19歳-,質問紙)
- PARS-TR(3歳-成人, 実施時間30-60分,短縮版は30分程度, 親面接尺度)
ここからは診断評価用
- ADI-R(90-150分, 親面接)
- DISCO-11(3時間, 親面接)
- ADOS-2(30-50分,行動観察)
- CARS2(,行動観察)
- 1次スクリーニングでは見逃しを少なくするように(感度を高く), 2児スクリーニングでは誤診を避けるため(特異度が高く)カットオフが設定される
支援に向けて
- アセスメントのプロセス自体が親や本人の気づきや理解を促す貴重な機会
- アセスメントでは具体的なエピソードを引き出す・記述することに注力
ADHD
- じっとしておらず育てづらさが乳幼児期にあるが, 4歳以前の正常範囲の行動は多様で, 区別は困難(APA, 2013)
- 幼稚園・保育園時代に他児との比較で親が違いに気づき始める
- 学童期がもっともシーキビな時代
- 思春期, 多動から、集中困難や衝動性へ
- 青年期・成人期は, 2次的問題がへの対処が焦点
- 総合的な生活能力が高い子ども・知的障害の子どもとの鑑別は, 好きな刺激・知的に妥当な刺激に対する取り組みで鑑別
- HFASDとの鑑別は他者配慮・折り合いのつけ方・新規場面における警戒心・恐怖や不安など(ADHDはウキウキ, ASDはドキドキ)
- ODD, CDのあるから拒絶感や敵意の確認も
- 鑑別は簡単でないので, 行きつ戻りつの検証が必要
フォーマルなアセスメント
- 知的能力→ウェクスラー系
- 情緒面で攻撃性が強かったり自己評価が低い→PFスタディ, 文章完成, 描画(バウムやHTP)
- 診断の補完として
- ADHD-RS-IV(5-18歳)
- Conners 3(6-18歳, 自己報告は8-18歳, 30分前後)
- CAARS(18歳以上)
LD
- 年齢相応の知能に比べて読み・書き・言語発達の到達度が低く, 練習しないといった環境要因を排除する必要性
- 必要な要素は, ①知能検査, ②読み書き言語発達、計算などの習得度、③要素的な認知検査(環境要因の排除)
- ①WISCやK-ABC-IIなど, 簡便なものならRCPMなど
- ②STRAW(漢字, カタカナ, ひらがなの音読と書字の測定, 15分程度)
- ②流暢性の検査は実践ガイドライン(保険診療対象, ただしひらがなのみ)
- ②受容語彙では, SCTAWやPVT-Rなど
- ③RAN課題(自動化の測定, STRAW-Rに含まれている)
3章
- WISCは能力的に5歳を超えていないと難しいので, 5-8歳の場合には知的水準に応じて, WISC, K式, ビネーを使い分ける
- 主訴の原因となりうる弱点と, 対応に活用できる長所の読み取りが解釈では重要
4章
- 適応行動評価の使い所で最も多いのは, 知的機能と適応行動のバランスの評価
- 個別の支援計画の作成の資料や福祉的サービス選択の判断材料にしたり
5章
- 感覚プロファイル乳幼児版(0-6ヶ月, 7-36ヶ月版)
- 3-10歳用
- 成人用(11歳以降)
- セクション, 因子, 像限のスコアが出て標準から比べて高いか判断可能
- 感覚過敏の診断項目に該当するかの判断に使ったり, 学校や日常での配慮の提案に使ったりが主たる使い方っぽい
- 運動面はDCDQ-Rが日本語版あり(質問紙)
- 直接検査はM-ABC2
- 日本では感覚統合学会のJAMPやJPANがある
- JMAPは(2:9-6:2, MAPの日本語版)
- 5つの領域での運動能力が算出
- JPANは感覚統合機能を評価(3-10歳)
- 4領域でスコアを算出
6章
- 見せかけのADHD行動がASD特性で説明できるか注意
- 併存する精神疾患では, LD, ADHD, ASDともに不安障害, 抑うつ障害は共通
- ASDの特徴的なのは睡眠障害, ADHDは強迫性障害, チック障害(生物学的基盤を同一にするとの疑いあり)
- ASDとてんかんもよくあるが, 発作がない段階では脳波検査の必要はない
- (DSM-5に記載はないが)ASDと統合失調症の併存は問題になることがあり, 状況から乖離した内容の妄想と幻覚の出現で診断可能
7章
- 他書で読んでいるので省略
8章
- 結果の統合の順序(グッドマン,2010)
- ①どのような問題が
- ②どの程度の障害や苦痛を引き起こしているか
- ③その問題や障害に影響している要因は何であるか,
- ③-1 基盤にある原因(素因)
- ③-2 きっかけとなった出来事(誘発因子)
- ③-3持続させてしまっている状況(持続因子)
- ④保護因子と働いている強みや長所を活用し, 得意なことや好きな活動を元にして, 支援計画を組み立てる
- フィードバックは, 本人に対しても発達段階に合わせた説明が必要
- 成人では, 本人が同意し可能であれあ, 周囲への説明をすることで環境の歩み寄りを引き出せる可能性も
何回か引用されていたグッドマンの本はこれかな