猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

24時間テレビの障害者企画における障害種

24時間テレビのシーズンですね。我が家にはテレビが無いのであまり関係ないのですが。

ネット上で娯楽なのかチャリティなのかはっきりせずモヤモヤすると言われたりするこの番組。
24時間テレビという「あやふやなもの」 - あれこれやそれこれ

番組内で障害者が何からしらの挑戦をする企画があると思います。この企画に出る障害者たちが、知的障害のない肢体不自由の人に偏っているだの、発達障害は取り上げられていないだの話を聞いたりしていて、障害種の内訳がちょっと気になったので調べてみようと急に思いたった訳です。

で、30年以上の歴史のある番組だから、エクセルで打ち込むようの表を作って「いざ。やるぞ。」と気合を出して作業に着手したのはいいのですが、参考にしていた日テレのサイトが2012年より前については放送内容の詳細が載っていないのですよ。
24時間テレビの歴史|24時間テレビ 愛は地球を救う|日本テレビ

ということで、2012年〜2015年の4年間しか調べることができず。障害者の出てくる企画は7件。肢体不自由が4件、視覚障害聴覚障害知的障害がそれぞれ1件ずつでした。

どなたか、2011年以前の放送内容が載っているページあるいは文献等をご存知でしたら教えてください。

Hodgdon, L. Q. 「視覚的コミュニケーション援助を用いて社会行動上の問題を解決する」

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

書誌情報: Hodgdon, L. Q. (1999). 「視覚的コミュニケーション援助を用いて社会行動上の問題を解決する」Quill, K. A.(編)『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』(安達潤・内田彰夫・笹野京子ほか訳)(377頁-411頁). 松柏社.[原著:Quill,K.A. (Ed.) (1995). Teaching Children with Autism. Albany, NY: Delmar Publishers.]

引き続きQuillの本から。Hodgdonによる11章。

この章は、行動上の問題を取り扱っている。行動上の問題というと、先行条件や結果事象の操作といったABA的な枠組みでアプローチをしたくなるところだが、この章では、行動上の問題をコミュニケーションの理解の側面の問題としてとらえ、視覚的援助を用いてコミュニケーションを成立させることが、いかに行動上の問題を減らすかを論じている。ABA的な枠組みで話をすると先行条件条件の操作に特化している立場とも言えると思う。

10章のDalrympleは、視覚的な支援の環境的側面に焦点を当てていたが、この章は視覚的支援を自閉症者がどのように理解して行動を起こすのか、そのプロセス的面に焦点を当てている。

前半では、特に音声言語的コミュニケーションの理解の困難さの要因についての研究が紹介され、後半では視覚的コミュニケーション援助を用いて行動を改善していく手法やその導入例が挙げられている。

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前章に引き続き、とても興味のある分野なので参考になる点が多々あった。この章に資料としてついている「状況観察質問紙」(p.447)というのも、コミュニケーションの理解の側面について考える上で有益なものに思った。

ちなみに、この章の最初の頁にはこう書いてある。

自閉症の子どもたちのコミュニケーション能力についての議論は、その表現スキルにほとんど集まっています(Paul,1987)。しかし彼らがまわりのコミュニケーション刺激をとり込んだりそれを意味づけたりする能力については、研究も記述もほとんどありません。(p.415)

出版されてから20年が経つが、この分野での研究はどの程度進んだのかまとめているものがあれば読みたいと思った。

ちなみに、著者が作っている(?)視覚的支援についての解説・紹介しているページがあった。http://usevisualstrategies.com
英語だけど、興味がある人は覗いてみると良いでしょう。

夏用のメッシュグローブを買ってみました

バイクを普段から通勤に使っているのですが、夏場のグローブをどうするのかというのは以前から悩みどころでした。

何もつけないで素手で乗ると涼しいのですが転んだときが怖いので、今までは暑いですが冬用のグローブを使っていました。しかし、あまりの暑さに我慢も限界に達したので、夏場でも涼しいと言われるメッシュグローブを買ってみました。

ラフアンドロード(ROUGH&ROAD) グローブ プロテクションエアスルーグローブ ライム L RR8416

ラフ&ロードの「プロテクションエアスルーグローブ」というものです。特にこれに決めた深い理由はなく、バイク用品店に行ったら「夏場の装着に最適なメッシュグローブのベストバイモデル」と書いてあったので何も考えずに買ってみた次第です。

着けて何日か走ってみた感想です。

良い点としては、メッシュグローブなので当たり前ですがとても涼しいです。停車しているときはそんなでも無いですが、走ると風を受けてかなり涼しいです。穴だらけなので中が蒸れるということもなく非常に快適です。また、ゴツゴツとプロテクションはついていますが、操作性に影響があるわけでなく特に不自由はしていません。

良くない点は、自分の手とぴったり合っている訳ではないサイズの影響なのかもしれませんが、メッシュ部分が多少チクチクすることです。特に手のひらの部分のメッシュが、手を曲げたときにたわみ、手のひらにメッシュのチクチク感を感じます。(まぁ、初めてのメッシュグローブなので慣れの問題なのかもしれません。もうすでにあまり気にならなくなってきていますので)

総合的にはとても満足しており、夏場にバイクで出かけるのがおっくうにならずに済みそうです。季節や用途にあった道具を用意するとうのはとても大切だということをあらためて感じました。

Dalrymple, N. J. 「環境的援助で柔軟性と自立性を発達させる」

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

書誌情報: Dalrymple, N. J. (1999). 「環境的援助で柔軟性と自立性を発達させる」Quill, K. A.(編)『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』(安達潤・内田彰夫・笹野京子ほか訳)(377頁-411頁). 松柏社.[原著:Quill,K.A. (Ed.) (1995). Teaching Children with Autism. Albany, NY: Delmar Publishers.]

前回に引き続きQuillの本から。今回はDalrympleによる10章。

この章は、自閉症児の柔軟性と自立性を高める環境的援助を、その効果的な使用法とともに記述している。ここで言う環境的援助とは、相手との相互作用といったものでなく、スケジュールや手順表、物の位置など自閉症児を取り巻く具体的な環境的側面のことを指している。それらについて、どんな種類の刺激がどこにどのような手順で提示されるべきかが検討されている。

環境的援助を用いる根拠としては、中枢性統合の弱さ(Frith,1989)や一般化の能力の弱さ(Sokes and Bear,1977)、注意の切り替えの弱さ(Courchesne, 1990)などが挙げられている。したがって、それらの弱さを補い適応を高めることが環境的援助の役割になるのである。

環境的援助の目的として、章のタイトルにもなっているが柔軟性と自立性の発達が挙げられている。刺激の過剰選択性を持つ自閉症児は環境の変化に対して敏感であり、ルーチンに依存するようになる。変化に応じることを学習するために、はっきりと分かりやすく周囲の情報を伝える環境的な援助が必要であり、それが自閉症児の柔軟性を高めることにつながる。また、行動の手がかりとして大人のプロンプトに依存している場合には、適切な環境的手がかりが提示されることにより自立的な行動が増えることが期待される。

環境的援助の具体的な種類として、時間的援助、手続き的援助、空間的援助、自己主張援助が紹介されている。それぞれの援助は、時間の流れや枠組みの理解、活動の各手順間の関係や人と物との関係の整理、周囲の環境整理、自分から周りに働きかけ、のために使われる。

環境的援助を行なう際に検討しなければならないこととして、個別化、社会的な適切さ、首尾一貫性、年齢相応か、他の状況への応用性などが挙げられている。また、環境的援助を実施するべき場面やいつ使うべきかも検討がなされている。


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環境的援助の側面に注目して記述・整理するというのは、ありそうであまりないので参考になるものだった。特に、p.380の表1「環境的援助」とp.412-413の資料10.1「環境的援助を使うためのガイドライン」は環境的側面について記述や整理を試みる際の足がかりになるものだと思った。

Scholer, A. L. 「自閉症の思考:その学習や発達の特徴」

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育

書誌情報: Schuler, A. L. (1999). 「自閉症の思考:その学習や発達の特徴」Quill, K. A.(編)『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』(安達潤・内田彰夫・笹野京子ほか訳)(13頁-49頁). 松柏社.[原著:Quill,K.A. (Ed.) (1995). Teaching Children with Autism. Albany, NY: Delmar Publishers.]

Quillの『社会性とコミュニケーションを育てる自閉症療育』を読んでいるのだが、自分の専門分野的にも丁寧に読まなければならない本に思うので、これについては章毎に記事にしようかと思う(全部はやらないけど)。


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今回は1章のSchulerによる「自閉症の思考:その学習や発達の特徴」。

この章の主張を簡単にまとめると、自閉症の思考の特徴は「物」についての思考と「人」についての思考のアンバランスさであり、それが、自閉症者の社会的やりとり、情緒、コミュニケーションおよび言語の学習の特異性を特徴づけている、ということである。

「物」についての思考と「人」についての思考が違っているというのはKannerの初期の観察の時点で指摘されていた。しかし、生後初期の社会性の発達やコミュニケーションの発達は20世紀の中頃にはよく知られていなかったため、Kannerの初期の観察が理論的な枠組みを持つことができずに、多くの意見の対立が産まれてきたのである。

「物」についての思考と「人」についての思考の違いは、次のような認知的な情報処理の様式によって特徴づけられている。

  • 視覚的・空間的な刺激なのか聴覚的・言語的な刺激なのか
  • 刺激の入力が持続性(すぐに消えない)のものか、一過性のものか
  • 刺激の部分に注目するのか、刺激の要素を統合して解釈するのか

自閉症者の場合は、これらの前者の側の認知が得意である一方、後者の側の認知については不得意であることが知能テストや学習の実験から分かっている。そしてこのアンバランスさが社会性の発達を妨げているのである。

例えば、自閉症者の多くはコミュニケーションの試みが人に向きづらいことを考えてみる。人とのやりとりは、一過性で消えやすい聴覚的言語的な刺激の入出力を要し、それを相手の表情や場の状況など様々な要素を統合しながら行なうものである。先に見た認知特性的を考慮すると自閉症者が人に向けたコミュニケーションに困難をかかえるのは当たり前の話である。自閉症者のコミュニケーションは、視覚的空間的で持続性のある「物」に向けられ、主に物理的環境に働きかけることによって動機づけられている。

発達のアンバランスのため社会的なやりとりが学びづらいことに加えて、このアンバランスは情緒的なやりとりに否定的な影響をあたえるために社会的な孤立を生みやすく、適切な文脈が設定されないかぎり社会的なやりとりが未学習・未発達なまま成長していくことになる。

また、コミュニケーションの理解が言語および非言語的に阻害されているため、環境の変化への準備が何もなされないままに日々を過ごすことになるので、結果として予測可能な決まりきった行動や物理的な秩序を保つことに頼ることになるのである。

このほかにも遊びの発達、エコラリア、言語学習、共同注意や心の理論など自閉症の社会性の発達について、「物」への思考と「人」への思考を軸に説明がなされている。

最後には、自閉症の認知と学習スタイルの特異性を踏まえた上で教育の働きかけを工夫していくべきであるという提言をして章を締めくくっている。


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関連する様々な研究結果がまとまっているだけでなく、Kannerの指摘した思考の違いを切り口に、研究結果全体を俯瞰する視点を提示していて大変勉強になる章だった。

長崎勤ほか編著『個別教育計画のためのスクリプトによるコミュニケーション指導 障害児との豊かなかかわりづくりをめざして』

個別教育計画のためのスクリプトによるコミュニケーション指導―障害児との豊かなかかわりづくりをめざして

個別教育計画のためのスクリプトによるコミュニケーション指導―障害児との豊かなかかわりづくりをめざして

スクリプトを用いたコミュニケーション指導法の解説。3部構成で、1部は背景となる理論や基本的な考え方など、2部は実際のスクリプトの紹介と指導実践例、3部はスクリプトを用いた指導について理論的考察を深めたものになっている。

スクリプトとは、生活の中で行われるいくつかのルーティンが結合して内化されたものと説明されている(p.9)。具体的な例として、子どもが食事をする行為は、「食器をそろえる、お手伝いをする、食事の前に手を洗う、いただきますをいう、実際に食事を食べる、あとかたづけを手伝うなどの行為の連続(p.9)」であり、それらを「ストーリー化」された一連の行為として(=つまりスクリプトとして)子どもは獲得していくと考えられている。

そして、子どもは獲得するスクリプトを参照しながら、そのスクリプトの要素に対応した言語の意味・伝達意図の理解と表出を獲得していくと仮定されている。したがって、スクリプトによって子どもが言語を獲得する文脈を分かりやすく提示することで、コミュニケーションの発達が促されるというのが著者らの主張である。

インリアル・アプローチなどと同様、語用論的コミュニケーション観を背景としているため、コミュニケーション行動は文脈の中で解釈される。インリアルの場合は、比較的短い行為の連鎖であるフォーマットを利用したコミュニケーションの指導であったが、スクリプトの指導はそれよりも長い行為の連鎖を想定している。いずれのアプローチにせよコミュニケーション行動が引き起こされる文脈を適切に用意することにより、コミュニケーションの獲得を目指している。

少し古い本だが、コミュニケーションの指導をするにあたり、コミュニケーションそのものについて考える良いきっかけになる本だと思う。

サブナー・マイルズ『家庭と地域でできる 自閉症とアスペルガー症候群の子どもへの視覚的支援』

家庭と地域でできる自閉症とアスペルガー症候群の子どもへの視覚的支援

家庭と地域でできる自閉症とアスペルガー症候群の子どもへの視覚的支援

自閉スペクトラム症(ASD)の人に視覚支援を行なうにあたり必要な情報をまとめた本。視覚的支援とは何であるかの説明から、それが必要とされる根拠、典型的な視覚的支援の具体例などがコンパクトにまとまっている。

本の題名に「家庭と地域でできる」とあるとおり、主に対象とする読者はASDの子を持つ親である。親が視覚的支援を始めること手助けできるよう本書は書かれている。

本書で扱われる内容は、「なぜ視覚支援をしなければならないのですが」というような親から寄せられる典型的な質問に答えるような形で提示される。まえがきにも書かれているのだが、忙しい親がそんなにたくさん時間を割かなくとも視覚的支援を始められることを意図して、必要な情報が効果的に伝わるよう書かれている。

視覚的支援を行なうにあたって心理的なハードルのようなものをあげないような配慮も見られる。支援のやり方を解説する部分では、そうしたハードルを下げるため「視覚的支援を準備するのは時間がかかるので、ちょっとしたことから始めましょう」のようなアドバイスがされていたりする。

主な読者は親であるのだが、学校の教員や専門職においても視覚的支援の重要性というのは必ずしも浸透している訳ではないので親以外が読んでも得るものが多いと思う。(この点については訳者あとがきでも触れられている。)家庭と視覚的支援の方針を共有しようと考える際にも、ヒントになることはたくさんありそうである。

また、より専門的に視覚的支援について考えたい専門職にとっても、「視覚的支援の妥当性を示す論文のリスト」などが付録としてついていて有用に思う。(全部英語だけど)

本の薄さを考えると割高なような気もするが、内容はとても有益なので視覚的支援を始めてみたいけど、何をどうすれば良いか分からないという人にはぜひオススメしたい。