猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

サブナー・マイルズ『家庭と地域でできる 自閉症とアスペルガー症候群の子どもへの視覚的支援』

家庭と地域でできる自閉症とアスペルガー症候群の子どもへの視覚的支援

家庭と地域でできる自閉症とアスペルガー症候群の子どもへの視覚的支援

自閉スペクトラム症(ASD)の人に視覚支援を行なうにあたり必要な情報をまとめた本。視覚的支援とは何であるかの説明から、それが必要とされる根拠、典型的な視覚的支援の具体例などがコンパクトにまとまっている。

本の題名に「家庭と地域でできる」とあるとおり、主に対象とする読者はASDの子を持つ親である。親が視覚的支援を始めること手助けできるよう本書は書かれている。

本書で扱われる内容は、「なぜ視覚支援をしなければならないのですが」というような親から寄せられる典型的な質問に答えるような形で提示される。まえがきにも書かれているのだが、忙しい親がそんなにたくさん時間を割かなくとも視覚的支援を始められることを意図して、必要な情報が効果的に伝わるよう書かれている。

視覚的支援を行なうにあたって心理的なハードルのようなものをあげないような配慮も見られる。支援のやり方を解説する部分では、そうしたハードルを下げるため「視覚的支援を準備するのは時間がかかるので、ちょっとしたことから始めましょう」のようなアドバイスがされていたりする。

主な読者は親であるのだが、学校の教員や専門職においても視覚的支援の重要性というのは必ずしも浸透している訳ではないので親以外が読んでも得るものが多いと思う。(この点については訳者あとがきでも触れられている。)家庭と視覚的支援の方針を共有しようと考える際にも、ヒントになることはたくさんありそうである。

また、より専門的に視覚的支援について考えたい専門職にとっても、「視覚的支援の妥当性を示す論文のリスト」などが付録としてついていて有用に思う。(全部英語だけど)

本の薄さを考えると割高なような気もするが、内容はとても有益なので視覚的支援を始めてみたいけど、何をどうすれば良いか分からないという人にはぜひオススメしたい。