猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

佐藤暁『発達障害のある子の困り感に寄り添う支援』

同じ著者の『自閉症児の困り感に寄り添う支援』がとっても良かったため、同じ「困り感」シリーズであるこの本を手にとってみた。

自閉症児の〜』ほどのユニークさはないものの、発達障害のある人の立場にたってその困り感を理解しよういう姿勢は通底している。

例えば、子どものトラブルへの対応について書かれたページでは、ABCの記録を分析することが紹介されているが、そこでは、ABCの分析は行動を制御し変容することを主たる目的としている訳でなく、あくまで困り感を理解するための補助として役割を担っている。そして、困り感を軽減する対応を通じて問題の解決を図ろうとしており、同じABC分析でも純粋なABA的な考えとは大分違った印象を受ける。

また、発達障害児を学級などの集団の中において理解し支援しようとしているのもこの本の特色だと思う。特別支援関係の本は、とかく子ども一人ひとりをどう理解して支援するかという話に終止しがちだ。だが、この本では学級集団を育てる中でどう支援を行なうのかであったり、周りの子どもとその保護者へどう対応するかであったりと、発達障害のある子を個人として独立にとりあげるのでなく、学校生活の現実に即した形で理解し支援をする方法を紹介している。特別支援教育臨床を専門と掲げ、多数の学校を訪ねて支援の在り方を研究してきた著者だからこそ書けるような本なのだろう。

あとがきにはつぎのように書いてある。

「組織的支援」の重要性が強調されている。特別支援教育コーディネーターや校内委員会を設置することはけっこうである。しかしより大切なのは、学校の教育活動全体を組織化することではないだろうか。「組織的支援」には、「個の子どもの支援にかかわる組織化」と「教育活動全般にわたる組織化」の両方が必要である。このことが、この本を送り出す現時点で著者がたどり着いた、とりあえずの結論である。(p.189)

通常級の担任の先生から、特別支援教育コーディネーターや支援学校の先生など、幅広くオススメできる本である。(ただ絶版ぽいのではありますが・・・)

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