猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

発達障害と名称について

家に届いた『LD研究』にあった記述から、気になったので調べたことのメモ。

神経発達症群とは2013年にアメリカ精神医学会から新しく発表された、精神疾患の分類と診断の手引第5版(DSM-5)の中で、SLD・ADHD・ASDを含む8項目をまとめた呼称である。今後、発達障害に替わる呼び方として使用されるものと予想される。

小野次郎(2014):通常の学級における多層指導モデルMIMーつまずきのある読みを流暢な読みへー. LD研究, 24, 317-323.


まず、引用にある8項目というのは以下のとおり。

  1. 知的能力障害群
  2. コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群
  3. 自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害
  4. 注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害
  5. 限局性学習症/限局性学習障害
  6. 運動症群/運動障害群
  7. チック症群/チック障害群
  8. 他の神経発達症群/他の神経発達障害

https://www.jspn.or.jp/uploads/uploads/files/activity/dsm-5_guideline.pdf


DSMの改定に際して、学習障害(LD)は限局性学習症(SLD)に名称を改めた訳だが、その大きな変更点は、

  1. 下位分類の診断カテゴリー(例えば、「読字障害」や「算数障害」)をより包括的な診断基準にまとめたこと
  2. 心理検査等のIQとアチーブメントテストのスコアに有意な差(2標準偏差)があることを診断の基準とする、「IQ-アチーブメント乖離モデル*1」をやめたこと

らしい。包括的な基準にまとめたといっても、SLDにつづけてWith impairment in readingのようにより限定的に表記することもあるようだ。

http://dyslexiahelp.umich.edu/sites/default/files/IDA_DSM-5%20Changes.pdf


先のLD研究の引用だと、「発達障害」に替わって「神経発達症群」が使用されるだろう、とあるが、日本における「発達障害」の理解のされ方よりかは広い概念のようにも感じる。発達障害について解説している本やサイトを見ると、知的障害を定義に含めているものにはあまり出会わない。

発達障害|病名から知る|こころの病気を知る|メンタルヘルス|厚生労働省

発達障害とは:文部科学省


DSM-5が言うように、原因が脳の中枢神経にあるということに変わりはないのだから、ことさら知的障害発達障害を分けて概念化する必要もない気がするが、日本における発達障害がなぜ知的障害とは区別して概念化されたのかは調べてみたいところである。

*1:IQ-achievement discrepancy modelのことですが、日本語の定訳が分からずそのまんま書いています。