猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

愛着関係本を読む2

前回の記事に引き続き愛着関係の本を読む。今度は和書。

米澤好史『愛着障害・愛着の問題を抱えるこどもをどう理解し、どう支援するか?アセスメントと具体的支援のポイント』(福村出版)

著者は現場ベースで愛着の問題に取り組んでいる人らしい。問題の捉え方やアプローチの仕方は前回の記事で取り上げた翻訳本とは大きく違う(し、そもそも対象としている読者も違うだろう)。全部で3章構成。1章では、愛着障害の特徴の解説およびアセスメント、支援の方針が書かれている。2章では、具体的な例を挙げながら、愛着障害の視点からどのように現象を捉えるかについてや、しても良い支援としてはいけない支援について書かれており、本書の中心的な部分である。3章は2ページ程度のまとめ。

感想やら疑問点やら読みながら気になった点を残しておく。

アセスメントの利用法について

1章では、5ページにわたる多数の項目を含むチェックリストがついているがその使い方がいまいち分からなかった。愛着生涯と関連する多様な行動がチェックリストには含まれているが、どれにどれだけチェックがつくと愛着障害なのかという判断については本書の中に書いていなかったように思う。2章以降で、愛着障害の場合は発達障害とは異なる対応が必要になるという前提で支援の解説がなされるのだが、その行動が愛着の問題により起きているのかは大事な点だと思うのでそこのところをもう少し知りたいと思った。

ちなみに、おそらく同じもの?と思われる尺度作成についての論文があるが、探索的因子分析やって 怒涛の17因子(!)からなる尺度を作っている。因子数の決定の基準は記載はないのでこの因子数が適当かどうかは分からないが。

repository.center.wakayama-u.ac.jp

消去バーストじゃないかしら

不適切行動を「取り上げない」「無視する」という対応について、ADHDだと有効だが愛着障害では「してはいけない支援」として挙げられており、ペアトレの専門家が間違ったアドバイスをすることがあると警鐘をならしている(p.19-20)。ただ、説明に使われている行動の記述を見ると、愛着障害では注目の獲得のための不適切行動がエスカレートするということで、それは消去バーストの典型例なのではないかと思われる。ADHDであろうが、消去の際に不適切な行動の強度が上がったり、別の不適切な行動が現れるのは一般的な現象であり、これは望ましい行動の分化強化をせずに消去単独で介入しているのがいかんのであって、ペアトレのせいにしてしまうのはややペアトレが可愛そうなのではないかと思ったり。

この言い切り大丈夫かしら

これらの3大特徴[愛情欲求鼓動・自己防衛・自己評価の低下]は、愛着障害でなければ生じない特徴です。

自己評価の低下は愛着障害でなくとも起きるのでは・・・

〇〇支援がたくさん

2章では「〇〇支援」という言葉がゴシック体でキーワードっぽく出てくるが明確な定義が与えられている訳ではないのでふわっと分かったような分からないような気になる。具体例の中で現れるのでなんとなくは分かる。ただその種類が多い。一部を抜粋すると以下のようなもの。

  • 役割付与支援
  • 感情のラベリング支援
  • 先手奪取支援
  • 行動始発支援
  • 先手支援
  • ふれる支援, タッチ支援
  • 感情確認後、感情連結された代替行動支援
  • 媒介行動と感情連結されたスモールステップ支援
  • 予期・既知を装う主導権支援
  • 行動限定感情確認支援
  • 部分的参加支援
  • チームの役割分担支援

まだまだたくさん種類はある。