猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

発達障害と姿勢や身体の動きについて

仕事で小学校等を訪問していて、低学年の指導において姿勢や鉛筆の持ち方を丁寧に指導している学級を見た。クラスの子たちの字の形は大変整っといる印象を受けたが、そういえば自分はあまり姿勢とか身体の動きとかを熱心に調べたことがなかったと思い、次の論文を読んでみた。

www.jstage.jst.go.jp

2010年だし、まぁすごく古くというわけでもないでしょう。

前半は、障害種ごとに姿勢や身体の動きを取り扱う文献を概観しており、そこからは次のようなことが分かっている:

  • 複数の研究で自閉症児は姿勢や姿勢の動的な安定性において困難さを持つことが報告されている
  • 高機能自閉症アスペルガー症候群でも姿勢や身体の動きに課題がある
  • ADHDの3割〜5割が微細運動や全身運動の協調運動に問題があるとの報告がある
  • タイプにより苦手としている運動に違いがあり、不注意優勢型は操作などの微細運動、混合型はバランスなどの粗大運動を苦手とする報告がある
  • 衝動性多動性優位型は他のタイプと違った姿勢に課題を持つ可能性が示唆されている
  • ディスレクシアでは一定の割合で協調運動やバランスに問題を持つとの報告がある
  • ディスレクシアの運動の問題を読みの困難さ不注意や多動などのADHD様の症状と関連づけている報告もある

まとめると発達障害の場合、高い確率で姿勢や身体の動きに問題があると言えるだろう。

論文では次に、認知や行動、感情との関係が次の様にまとめられている。

  • 肢体不自由の認知発達の研究から姿勢と認知発達は相互に影響し合うことが推測される
  • 保護者への質問紙調査より、協調運動の遂行度、行動的問題には関連がある
  • 不安の高さと身体動揺の関連を調べた研究はあるがまだ確たることは言えない

論文の後半では、動作を切り口とした3つのアプローチが挙げられている。

1つはムーブメント教育であり、その根底には感覚運動の発達がその後の高次のスキルの習得に強い影響を及ぼすという考えがある。トランポリンやシーツブランコなどの遊具等を用いながら身体運動の経験を豊かにする中で感覚運動の発達を促していく。

2つ目は感覚と運動の高次化アプローチがある。身体と姿勢を発達を説明する枠組みの中核に位置付け、独自のアセスメントをもとに、感覚や身体運動を引き出すプログラムを組み立てて行う。

最後は臨床動作法である。そこでは、身体の動きの意図や努力性などの心的過程を重視して、思う様に動かせる身体(動作)を獲得していくことを狙いとされる。もともとはまひなどの肢体不自由児への適用がなされていたが、近年は発達障害児への適用事例も増えてきている。

最後に、今までの発達障害の支援が「認知」や「行動」面に重きを置いてきていることを指摘しつつ、姿勢や身体運動を切り口とした支援を充実させることで、より豊かな支援を行うことができるようになると主張している。


今まであまり関心がなかったのだが、実務上でそれなりに重要かとも思い始めたので、意識的に情報を得るようにしたいと思った。