猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

川上康則編『通常学級でできる発達障害のある子の学習支援』

久々に臨床的なものの紹介でも。オールカラーでイラストたっぷりで薄い。モノクロでイラストなしでいいから半分ぐらいの値段にならなかったのだろうか、というのが初めに読んだ時の感想(笑)

内容としてはほぼタイトル通りで、小学校の通常学級内で学習につまづきがある児童・生徒への支援の事例が14例紹介されている。どの事例に対しても支援の方針として、行動の背景にある要因に注目すること、クラスワイドで学級への支援や授業の組み立てを考えることを基本としている。

各事例は、こどもの典型的なつまずきのケースが紹介され、まずその場で出来る対応および子供のふるまいをみとる視点が紹介されている。その後、氷山モデルを用いてつまずきの背景となる要因が説明されたあと、クラス全体にできる支援、個に応じてできる支援、長期的な視野での発達的(あるいは治療的)支援等が紹介されている。事例および支援は見開き3ページで収まるようになっており、コンパクトにまとまっている。

通常級での学習支援をテーマとした本なので、個を詳しく見るよりも、クラスの雰囲気づくりなどの学級経営的な側面への対応が書かれており、特別支援教育コーディネーターや指導主事、主幹教諭など学級へのコンサルテーションを行う立場の人が読むと得るものがあると思う。

本書で紹介される事例は以下の通り。

  1. 授業への集中が続かず違うことをする
  2. 不注意なまちがいが多い
  3. 音読がうまくできない
  4. 説明文を読み理解するのがむずかしい
  5. 中心人物の気持ちの変化の読み取りが苦手
  6. 文字を覚えられない、形がととのわない
  7. 感じが書けない、まちがいが多い
  8. 作文が苦手で書くのをいやがる
  9. 繰り上がり・繰り下がりの計算ができない
  10. 割り算ができない
  11. 文章題になるとわからない
  12. 図形の問題がわからない
  13. 不器用なため学習が進みにくい
  14. 体育の時間が嫌い

気になったことだが、編者の名前があるのに著者の情報が無いこういう本は、出版社の人が何かを参考に資料をまとめて、それを編者がチェックしてゴーサインを出すみたいな作られ方をしているのだろうか。