感覚統合訓練って効果あるの?
少し前に友人と感覚統合系の人たちはバランスボール好きすぎじゃないか問題について話をした。それで、感覚統合系の業界での評価がどんなものなのかが気になり調べて見た。
日本語で読めるものでまず出て来たのがこれ。2006年とやや古い。
13件の研究が最終的なレビューの対象となっている。ざっくりと結果をまとめると:
- エビデンスの質を表すエビデンスレベルはⅣとⅤ。ちなみに、エビデンスレベルでは一番良質なエビデンスはⅠで、最低のエビデンスはⅥとしている。Ⅳだった研究は群分けしてるけどランダム化の手続きがとられておらず、Ⅴだったものは症例集積研究だったそうである。
- 上記のエビデンスの質および、効果の検証をしているデザインの少なさ、治療の副作用やコストの未検討、LDやMBDの症例群についてはある程度一貫した見解などを総合的にみて、「行うよう勧められるだけの根拠が十分でない(勧告C)」という強さの勧告だと判断されている。効果がないとは言い切れないけれど自信を持ってあるとは言えない、ということですかね。
次は英語のやつ。本文は読んでないのでアブストからのみ。
ASDを対象としたレビュー。2015年。レビュー対象は2000-2012年の研究。
含まれたのは19件の研究。介入の種類を2つに分けていて一つが、クリニックを中心にたくさんの感覚刺激の用いる系の感覚統合療法(sensory integration therapy)で、もう一つが教室を中心に、感覚への方略を一種類のみ使う(例えばバランスボールとか)系の感覚ベースの介入(sensory-based interventions、訳語は適当)だそうだ。前者が5件、後者が14件だった。ざっくりと結果をまとめると以下の通り:
- 感覚統合療法の方には、ランダム化比較実験が2件あり,目標達成スケール(GAS)においてポジティブな効果があった。GASというのはリハの領域で使われているものらしく 最も望ましい状態から、最も望ましくないものまで5段階で設定するもののようだ。他の3件は、エビデンスレベルはⅢ-Ⅳなものの感覚に関連する問題行動を減らすのに効果があったらしい。
- 感覚ベースの介入の方では、ポジティブな効果が得られた研究はほとんどなく、この介入には効果がないかもしれないことを示唆している。
この研究をみていると、教室で感覚系エクササイズを取り入れましょうとか、通級で感覚遊びとかは効果がないかもしれない。
次、2015年。アブストのみ読んだ。
発達障害、LDを対象しているメタ分析。結果は次の通り:
- 介入なしと感覚統合を比べると統計的に有意だが効果量は小さい。
- 他の介入と感覚統合を比べると統計的に有意な差はない。
- 研究の方法論的不備(介入法の明確な定義、測定のintegrity(うまい訳語が思いつかない)、研究の質、多様な結果の測定) があった。
上記を総合的に見て、感覚統合は診断群に対して効果的な介入であると示す根拠はほぼないと結論している。
次、アメリカ作業療法学会の学会誌。2017年。新しい。
システマチックレビューで障害のある人のICFにおける生活機能と参加が変容したかを検討。2007年から2015年で、3件のランダムか比較実験、retroactive分析(訳語は分からず)1件、単一事例の1件で全てが自閉症であった。
- 目標達成スケールで測定される生活機能と参加において肯定的な結果を示す質の高い根拠が見出された。
- 自閉的行動の改善に中程度の根拠、自助スキルにおいて養育者の介助の現象にも中程度の根拠があった。
- その他、遊び、感覚運動、言語、ソーシャルスキル等では十分な根拠が見られなかった
作業療法の雑誌だからか、介入に対して一番肯定的な結果を書いている。
ここまでいくつかのレビューを見てきたけれど、レビューによっても結論が変わっているのでなんとも言えないですね。少なくとも、「全く効果がないとか」とも「効果に十分な根拠がある」とも言えない感じで、やりたい人はやればいいんじゃない?ぐらいがこれらから言えそうなことでしょうか。