猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

猫も杓子も今年の3冊【2015年】

年末のこの時期になると「今年の〇〇冊」的な記事が増えますが、この零細ブログも書評的なことがメインなコンテンツですので、その流れにのって書いてみたいと思います。

今年は自分の仕事関連でそれなりに大きな変化があった年で、特別支援界隈に今までもいたものの、あらためて知識や技術をインプットし直す的なことに力を入れた年であったので、選書については「特別支援の初学者にオススメするとしたら」というテーマで、自分自身が初学者として参考になった本を中心に選んでみました。

TEACCH関連

自閉症の特性理解と支援―TEACCHに学びながら

自閉症の特性理解と支援―TEACCHに学びながら

  • 作者:藤岡 宏
  • 出版社/メーカー: ぶどう社
  • 発売日: 2007/09/01
  • メディア: 単行本

ブログタイトルの「構造化」はTEACCHの教育上の技法ですが、TEACCHの考え方というのは自分の実践に強い影響を与えていて、今年は日本語で書かれたTEACCH関連の本はとりあえず手にとってみようというスタンスでたくさん読んできました。TEACCHの強みというか特徴というかは、教育上の特定の技法や特定の制度というよりかは、自閉スペクトラム症への深い理解とその理解に基づく自立観であると思います。なので、TEACCH関連で1冊オススメするとしたら、やはり、その理念というか考え方の部分を十分に伝えている本が良いのかと思い選んでみました。

この本は、TEACCHの考え方を紹介するだけではなく、著者の関わる実践の中でそれらが具体化されている様子が分かりやすく紹介されていて、TEACCHを知るにはもってこいの1冊だと思います。


以前書いた記事:藤岡宏『自閉症の特性理解と支援 TEACCHに学びながら』 - 猫も杓子も構造化


ABA関連

行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

行動分析学入門 ―ヒトの行動の思いがけない理由 (集英社新書)

特別支援に特化した本という訳ではありませんが、行動分析学の押さえておくべき基本がこのコンパクトな新書にぎゅっとつまっている感じです。技法として行動分析を入門するとしても良い本だと思うのですが、何より良いと思うのは、著者が前書きで書くように行動分析学の核となる考え方を紹介しており、心理学において行動を分析の対象とする意味にしっかりと向きあっている点だと思います。


以前書いた記事:杉山尚子『行動分析学入門ーヒトの行動の思いがけない理由』 - 猫も杓子も構造化


その他

支援者の仕事はすごい大雑把にいえば、障害を生きる人の幸せを目指して行うものだと思います。で、その幸せについて考える際にどうしても避けられないのが、障害を生きることの意味について考えることです。この本は、「障害受容」という言葉を切り口に、当事者・家族・支援者などがそれぞれの立場から「障害を生きること」の意味について書いています。明日の支援にすぐに役立つ内容ではないですが、自分の支援が支援者の理屈・理論の押し付けになっていないか、本来当事者や家族それぞれによって違っていて個別的なはずの障害との生き方を画一的なものとして扱い幸せのあり方を狭めていないか、など読後に様々なことを考えた本でした。


以前書いた記事:田島明子編著『障害受容からの自由ーあなたのあるがままに』 - 猫も杓子も構造化