坂爪一幸『特別支援教育に力を発揮する神経心理学入門』
特別支援教育に力を発揮する神経心理学入門 (ヒューマンケアブックス)
- 作者: 坂爪一幸
- 出版社/メーカー: 学研プラス
- 発売日: 2012/03/15
- メディア: Kindle版
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今まで避けてきた脳機能関連について入門したいと思い読んだ。
高次脳機能障害の研究で明らかになっていることをベースに発達障害を理解しましょう、というのがこの本のテーマ。筆者によると、脳科学と教育をつなげる学問領域にあたるのが神経心理学である。
高次脳機能障害について、ほとんど何も知らなかったのだが、初学者にもほどよいボリュームで非常に読みやすかった。と同時に、読んでいて疑問に思う点もあった。
それは、著者の言う原因療法的な教育の「評価」についてである。著者は繰り返し、子どもの「ふるまい」だけに着目する対処療法的な教育に終止するのでなく、子どもの行動の根底にある脳の機能の向上を目指すべきだと主張している。
教師は、神経心理学のみかたを活用して、「適切な指導をして脳の機能を向上させて、脳の構造を変え、子どもを成長させる」、「神経回路のよりよい形成を促す」という意識をもって子どもの指導にあたることも必要である。(p16-17)
行動の背景に高次脳機能が関わっているのは疑いようのない事実に思う。では、高次脳機能の評価をどうするのかというと、脳の働きを直接観察することはできないので、結局は行動を基にして脳機能について推論する以外ないと思う*1。巻末に著者が発達相談で使っている「発達神経心理学的機能評価表」というものがついているのだが、これを見ても高次脳機能の評価は行動をベースにしているように思える。
評価に行動を介在させる以上は、「行動→機能」を評価するなんてまどろっこしいステップをふまなくても「行動」そのものを評価し、「行動」そのもの変えることを目標にしても良いように思ってしまう。こう思ってしまうのは、私が行動主義に毒されすぎているからだろうか。
この本には高次脳機能の評価の詳細な手続きや、その結果を支援や指導につなげる具体例はわずか3例しかのっていないので、認知リハビリテーションの現場でここらへんがどう扱われているかをもう少し調べたらまた考えたい。