猫も杓子も今年の3冊【2016年】
年の瀬なので今年読んだ本で良かったものを紹介します。
ちなみに、昨年の記事はこちら。
nekomosyakushimo.hatenablog.com
今年は昨年に比べるとあまり本を読むことができなかったです。今までに学んだことを、実践してみたり、それを人に伝わりやすいようにまとめる系の仕事が多く、バタバタと結構忙しかったので新しい知識や技術を仕入れる方面に手が回りませんでした。(その分たくさんお話の機会をいただいて話好きの身としてはとても楽しかったのではありますが)
読んだ本の数自体は少ないのですが、「コレは!」と思った3冊を紹介します。やや特別支援からはずれているものもありますが気にせずいきます。
自閉症支援関係
今年読んで圧倒的に良かったのはコレ。自閉症の人の支援に関わる人は全員読むべきってぐらいオススメです。
自閉症の人の支援について書かれた本は数多くありますが、この本のユニークな点は徹頭徹尾自閉症の人の立場に立って物事を考えようとする点です。
ちょっと支援について学んでくると、やれ「認知」がどうだの「行動」がどうだの「アセスメントの結果」がどうだの言いたくなるのですが、そういう風に自閉症の人を「対象」とした瞬間に自閉症の人の立たされている立場、世界の見え方からは離れていきます。(これは、支援する人各々の資質というよりも、「認知」だの「行動」だのを言う学問分野の認識論的な問題に起因すると思っています。方法論を輸入することは、その背景にある認識論を密輸入することでもあります。だからこそ、方法論についてのメタな議論をする必要性があり、また方法論(とその背景にある認識論)の限界について知っておく必要があると考えています。)
この本では、自閉症の人を支援の「対象」として見る既存の枠組みを取り外し、自閉症の人の困り感を理解するための哲学的議論が展開されます。哲学的と言っても、小難しい抽象的なことをやんややんや言うのでなく、哲学の議論から借りてきた概念を使って、自閉症の人に感じている困り感を理解するためのイメージが提示されるのでサクサクと読むことができ、読み終えると自閉症の人たちについて「ああ、こういう風に困っていたのね」と理解できると思います。
定期的に読み直し、自分の自閉症支援観とでもいうべきものを振り返ると良いと思います。
【過去に書いた記事】
nekomosyakushimo.hatenablog.com
アセスメント関係
実務の方でアセスメントって大切だなぁということを個人的には実感した1年でしたので、アセスメント関係から1冊。
特別支援の界隈にいるとアセスメントが大事だ、大事だとはよく聞く話です。で、世に出回っている色々なアセスメントについて、本を読んだり研修を受けたりして学んでいく訳です。そうすると、アセスメント自体には詳しくなっていくのですが、それぞれのアセスメントそのものはあくまで道具でしかなくて、それらの道具どう上手に活用するかについても同時に考えていかないといけない訳です。
学校現場などでも、アセスメントをとったは良いけどそこから有益な情報は引き出されないまま結果が表にまとめられて(あるいは個人情報の棚にしまわれて)おしまいのようなケースはよく見聞きする話です。
この本は、各種のアセスメントが簡潔にまとめられている部分もためになって良いのですが、それ以上に、アセスメントとの付き合い方のようなものを考える契機になるという点でオススメです。
【過去に書いた記事】
nekomosyakushimo.hatenablog.com