猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

田中康雄『ADHDの明日に向かって』

とあるお医者さんからの紹介で知った本。副題に「認めあい・支えあい・赦しあうネットワークをめざして」とある。著者はADHDを支え合うネットワークづくりを現場で実直に行ってきた医師である。具体的な経験に基づく知見が書かれており、今現在学校の外から特別支援教育に関わる身として大変勉強になるものがあった。

大きく2部の構成に分かれている。1部はADHD児がどのような問題にぶつかるか、ADHDの歴史、臨床像や原因、疫学情報などの基本的な事柄が紹介されている。2001年が初版であるので、やや情報は古い部分があるが、実際の子どもの姿を描写しながら説明がなされるので非常に読みやすい。

2部は、支援を行うためのネットワークをどのように作るかが紹介される。連携における具体的な流れとそのコツや失敗談など、実際にネットワーク作りに苦心してきた著者にしか書けない内容だと思う。具体的な支援について関心がある人にとって有益な情報も多々載っているが、具体的な支援を分担して行う支援体制を作ることなどに関わる人にとって特に有益な情報が載っているだろう。