猫も杓子も構造化

発達障害、特別支援などについて書いています。最近は心理学関係の内容が多めです。

2017-01-01から1年間の記事一覧

テキストエディタとモチベーション

モチベーションっていうのはなかなか制御するのが難しいものであり、かなりのところ環境要因の影響を受けるものである。スキナー大先生のお言葉を借りれば、私的出来事(private event)であり、私的出来事も他者から観察不能なだけで、三項随伴性の支配下に…

Pythonでお絵かき(続・カフェウォール錯視編)

前回の記事でPILというライブラリを使ってカフェウォール錯視を描く方法について書き、結果次のような画像が出来上がった。今回はより実験刺激っぽく、明度を系統的に変化させながら刺激を作る場合について書こう。例えば、真ん中の線の明度を系統的に変化さ…

Pythonでお絵かき(カフェウォール錯視編)

PIL(Python Imaging Library)というものがある。これは、Pythonで画像関係のデータを扱う際に必要なものをまとめたライブラリなのだそうだ。何かしらの実験刺激を作る際に、決まったパターンで単純な図形を繰り返したいときというのがあり、そういう場合に…

Pythonでのベクトル処理

Python初学者が戸惑ったとことかを備忘録がてらメモしておく。Rとの違いでまず迷ったのがベクトルとスカラーの演算である。例えば、Rだとあまり何も考えずにオブジェクトにベクトルを放り込んで演算をすれば勝手にやってくれる。 > a <- c(1:20) > a [1] 1 2…

Atomに入れてみたパッケージ

Atomというのは色々とカスタマイズできることが売りのエディタということで、いくつかの記事を参考にしてパッケージを入れてみる。参考にしたのは、次のような記事。AtomでPythonの開発環境を整える - Qiita オススメのatomパッケージ7選 - Qiita とりあえ…

Atomの導入やら

実験刺激を作れるようになろうと思いPsychoPyというアプリケーションのPsychoPy Corderというのを先月あたりから使い始めた。刺激作成のライブラリとしては使いやすく、基本的な動作はなんとなく分かってきたものの、もう少し快適な開発の環境にならないかと…

2E教育について

自宅に『LD研究』が届いたので、パラパラと目を通す。特集は昨年のシンポジウムの2E教育について。基調講演の後に話題提供が4件続き、その後に指定討論者のコメントが加えられるというスタイルである。話題提供に目を通していて、2Eという概念が未整理な印象…

理論的な根拠と言うけれども

自閉症の人に対する構造化という支援の手法がある。わたしのブログのタイトルにもなっている。先日友人と話す中で、それに関連して次のような質問を受けた。「自閉症の人の認知の仕組み(例えば、実行機能障害や弱い中枢性統合など)を明らかにすることは、…

自閉症:「心の理論」を超えて

フリスとハッペによる次の論文を読んだ。Autism: beyond "theory of mind". - PubMed - NCBI 前半は、心の理論の登場がどのように研究に影響を及ぼしたかというのがレビューされている。その後、心の理論では上手く説明できない自閉的特性の非社会的な側面を…

池田光男『眼はなにを見ているかー視覚系の情報処理ー』

眼はなにを見ているか―視覚系の情報処理 (平凡社 自然叢書)作者: 池田光男出版社/メーカー: 平凡社発売日: 1988/08/01メディア: 単行本 クリック: 11回この商品を含むブログ (1件) を見る『基礎から学ぶ認知心理学』(有斐閣)で紹介されていたので読んだ。…

比率の差の検定・多重比較

群間で条件ごとに比率の差を検討したいような状況を考える。例えば、自閉症の人の弱い中枢性統合の仮説を検討するためにHappeという研究者が1996年に行った実験の分析はその状況である。研究では、通常錯視が起きやすいと思われる2D条件と、錯視が起きずらい…

自閉症系の国際誌のインパクトファクター

【2017年8月30日に追記】Mollcular Autismって雑誌があってこれはIF4.833らしい。編集主任の一人は「心の理論」でお馴染みのSimon Baron-Cohen 。2010年からの雑誌で、基本的にオープンアクセスっぽい。Molecular Autism | Home page【追記ここまで】 どれが…

配置処理の3種類

顔の認知の際には、顔の各パーツ(目とか鼻とか)のレイアウトに関する処理を行っている。こうした要素間の関係についての処理のことを、配置処理(configural processing)という。Maurerらのレビューによるとこの配置処理には3つのタイプがあるのだそうだ…

二項分布とポアソン分布

二項分布とポアソン分布も親戚関係にあるらしい(『キーポイント確率統計』岩波書店)。二項分布を、npをλに固定したまま、pを0に近づけ、nを無限に大きくしていくとポアソン分布が現れるからである。二項分布は超幾何分布の子どもだった訳だから、さしずめ…

大数の法則のシミュレーション

『統計学入門』(東京大学出版会)の中で大数の法則を説明している章があり、その中でコンピュータシミュレーションによる実験が紹介されている。成功確率p=0.4のベルヌーイ試行を20000回行い,100回おきに成功率を計算して、nが増えるに従いp=0.4に近づくか…

測定することと情報の取捨選択

ある測定方法をとることは、何かをあきらかにし、何かを捨てている。「その測定により何があきらかにされたか」,「その測定により何が捨てられたか」を考えることは, 他者の研究をみる上でも, 自分の研究を行う上でも重要である。(市川, 1990, p.8) さすが…

超幾何分布と二項分布

超幾何分布というのは二項分布の「親」であるらしい(『キーポイント確率統計』岩波書店)。どういうことかというと、超幾何分布の当たり数とはずれ数の比を一定にしたまま、当たり数とはずれ数の数を極限まで増やすと、二項分布に一致するからである。これ…

超幾何分布について

超幾何分布という確率分布がある。これは、二項分布の非復元抽出版のことである。トランプを山から何枚か引く場面を思い浮かべてもらうと分かりやすいかもしれないが、1枚引くたびにカードを元の山に戻すのが復元抽出で、カードを戻さないのが非復元抽出であ…

大村 平『実験計画と分散分析のはなし』

実験計画と分散分析のはなし―効率よい計画とデータ解析のコツ作者: 大村平出版社/メーカー: 日科技連出版社発売日: 2013/01/01メディア: 単行本この商品を含むブログ (1件) を見る直交表やラテン方格などの実験計画関連に興味を持って読んだ。前半は、分散分…

服部 雅史ほか『基礎から学ぶ認知心理学』

基礎から学ぶ認知心理学 -- 人間の認識の不思議 (有斐閣ストゥディア)作者: 服部雅史,小島治幸,北神慎司出版社/メーカー: 有斐閣発売日: 2015/09/19メディア: 単行本(ソフトカバー)この商品を含むブログを見る認知心理学を浅く広く入門したいと思い読んだ…

多変量正規分布の累積密度とか

以前の記事で多変量の正規分布に従う乱数を発生させるのにMASSというパッケージを紹介した。 任意の母相関を持つ多変量の生成 - 猫も杓子も構造化多変量の正規分布を扱えるパッケージは他にもあって、mvtnormというパッケージがある。こっちのパッケージのrm…

十河宏行『心理学実験プログラミング』

心理学実験プログラミング: Python/PsychoPyによる実験作成・データ処理 (実践Pythonライブラリー)作者: 十河宏行出版社/メーカー: 朝倉書店発売日: 2017/04/12メディア: 単行本この商品を含むブログ (2件) を見る当面の自分のやることに関係ありそうなとこ…

任意の母相関を持つ多変量の生成

例えば、母相関係数が0.9である変数xと変数yを生成したいとする。google先生で調べると次のようなサイトが次のような資料を見つける。Rで架空データの発生なので、言われた通りにやってみる。 rho <- 0.9 n=1000 z <- rnorm(n,0,1) e1 <- rnorm(n,0,1) e2 <-…

行動カスプとは何か

応用行動分析学(ABA)のマイナー用語を調べてみようのコーナー。今回取り上げるのは行動カスプ(behavioral cusp)。カスプとは先端とかとがった部分という意味です。この概念の提唱者はRosales-RuizとBaerという研究者で、1996年だとか1997年だとかがおそ…

小倉晶男『福祉を変える経営ー障害者の月給1万円からの脱出ー』

福祉を変える経営~障害者の月給1万円からの脱出作者: 小倉昌男出版社/メーカー: 日経BP社発売日: 2003/10/09メディア: 単行本購入: 6人 クリック: 84回この商品を含むブログ (21件) を見る著者の小倉さんは、クロネコヤマトで有名なヤマト運輸の元会長で、会…

ABAと用語の誤用

以前の記事でも似たようなことを書いたが、最近ABA関連でまた誤用に出会った。ABAにおける「ABABデザイン」という言葉が、「ベースラインに後続して介入条件Aと介入条件Bを繰り返す実験デザイン」だと勘違いされていた。ABAの適当な教科書を参照すればすぐに…

エクスクルーシブなインクルージョン

イギリス特別なニーズ教育の新たな視点作者: メアリー・ウォーノック,ブラーム・ノーウィッチ,ロレラ・テルジ,宮内久絵,青柳まゆみ,鳥山由子出版社/メーカー: ジアース教育新社発売日: 2012/03/15メディア: 単行本この商品を含むブログを見る必要があってこ…

正の強化・負の強化という言い方をやめにしよう

表題の通りの主張です。代わりに「好子出現の強化」「嫌子消失の強化」を使うと良いと思う。なぜこんなことを思ったのかと言うと、先日「行動分析の専門家」を自称する人が負の強化を誤った用法で解説しているのを聞いたからである。その人はストーカーを例…

ソーシャルストーリーとソーシャルナラティブ

ASDへの実践の文献を読んでいるとsocial narrativesという語によくあう。実践の内容や説明を見ているとソーシャル・ストーリーとほぼほぼ一緒なのだが、こっちの言われ方の方がよく見かける。で、何か違うのかと調べていたら次のようなサイトを見つける。the…

続・シングルケース研究のグラフをRで描く

昨日の記事では折れ線グラフに白線を重ねて一部の線を消すなんて面倒くさいことをしたのだけれど、よくよく考えれば最初からデータを分けて入力してプロットすればいいだけの話であった。データの準備の時点でフェイズごとにデータを分けて用意する。 #デー…